サプライチェーン4.0実現への近道
Part 2 サプライチェーン・コントロールタワー

インターシステムズジャパン株式会社
ロジスティクス営業部 部長 佐藤 比呂志

前回(Part1)は、日本の物流システムの現状と、SCM 4.0 について書きました。

SCM 4.0とは直接は関係しませんが、そこで目指している世界を実現するための方法論があります。

それがサプライチェーン・コントロールタワーと呼ばれるものです。

これはサプライチェーンに携わってきた ITコンサル会社や ITアナリスト企業等が提唱し始めたコンセプトで、少なくとも5年くらい前から言われてきたことですが、なかなか実現できていませんでした。
しかし今回のコロナ禍の状況下でサプライチェーンの分断化が様々な所で発生し、様々な影響が顕在化したためそれらを解決するためには、こういうしくみが必要だということで再度世間の注目が高まっています。

他の業界にはまさにこのシステムのお手本となるシステムがあります。
それは航空業界の管制塔のシステムです。

サプライチェーン・コントロールタワーの概要
サプライチェーン・コントロールタワー

 
管制塔というものがあるからこそ飛行機は安全に飛行できているわけで、この機能がなければおそらく飛行機の安全な運用は不可能でしょう。管制塔の機能の肝は、管轄内の飛行機の走行状態および周辺情報を全て把握し、それに基づいて様々な指示を飛行機に与えることで運行を制御します。管制塔のシステムは実際には ITシステムとそれを操作する管制官とのコンビで運用されますが、まず行わなければならないことは飛行機の関連情報を人が理解できる形で提供する可視化です。
さて、このような考え方をサプライチェーンに適用するにはどうすればよいでしょう。

ところで、飛行機の世界ではこの管制塔のシステムが完璧に実装されて長い間運用されているのに対して、同じことが適用できそうなサプライチェーンで、なかなかそのようなシステムが実現できていない理由はなにかあるでしょうか?

これは私の想像の域を出ませんが、一つ目は、危急性、緊急性です。
飛行機の場合には、この機能がなければ、人命が担保できませんので、そもそもビジネスが成り立ちません。一方、サプライチェーンの場合は、いろいろな支障があるにしても人命にまで関わることはそんなにないため、なくてもなんとかやりくりできたという点がひとつあります。

次に飛行の情報を全て把握することももちろん大変ですが、サプライチェーンの場合は、対象となるものの量、種類などが桁違いに多くなるために実装のハードルが各段に高い、そして関わる人、組織などが多岐にわたるための交渉事など解決しなければならないことが山のようにあります。ということでこのような機能の実装は先送りされてきたわけですが、いよいよ、その様なシステムを作らないことには前にすすめない状況になってきました。実現に向けて一気呵成に構築といきたいところですが、そもそも非常に構築の難しいシステムなので、着実にことをすすめていくべきでしょう。

 
それでは、サプライチェーン・コントロールタワーを実現するステップについて考えてみましょう。

まずは、先ほどにも言及しましたが、コントロールタワーに流れるデータを可視化する所から始まります。
ただ可視化しただけではそんなにメリットは感じられないでしょう。
しかし、この可視化はその後に続くステップの実現に不可欠なものなのでまず最初に行わなければなりません。

可視化のメリットを実際に感じられるのは、次のステップであるアラートの発出です。
これは旧来のシステムがプル型、つまり人が何らかのトリガーを与えない限りシステムが作動しないのに対して、プッシュ型のシステム、つまりシステム側から人(機械でも別のコンピュータでも良いです)にアクションを促すことを実現できます。まず、人がアクションするということが出発点となるとそこがボトルネック(量をこなせない、システム側から情報提供の準備ができていない場合には待ちが発生するなど)になりがちですが、システム側から発出するタイミング、そのトリガーの発出量、対象条件を制御することで効率良く人の介在を抑えることができます。

そして次のステップが、意思決定支援です。
人にアクションを促すに際し、その人が状況を正しく理解して正しい判断を下すために、先ほど述べた通り、正しいデータを適正な量渡す必要があります。

この適正な量というのもなかなか難しいところで、正しいけどその量が大量すぎると人はなかなか限られた時間内に正しい判断を下せません。必要十分な情報量のデータを人が理解しやすいように整理された形で提供されなければなりません。

そして次のステップが最終ゴールに近い、その状況判断、意思決定すらもコンピュータに任せてしまおうということになります。コンピュータの場合には、正しい量のデータというハードルは人に比べると幾分改善されるかもしれませんが、より整理された形でデータを提供しないとコンピュータは融通が利きませんから正しく機能しません。

この部分で大きく期待されているのがAI/ML(機械学習)といった技術になります。

そもそも人が行っている操作や判断をコンピュータで完全に実装しずらい理由は、人間の判断がかならずしも全て完全に論理的に説明できない部分があること、サブジェクトマターエキスパート(その道のプロ)にヒアリングして、その知見をシステム開発者が実装するためにその内容を完全に理解するのが難しいこと、そしてそもそもその変換作業にも非常に時間がかかるために結局コストや物理的に限られた時間の中では現実問題として困難です。これはロジックを積み上げていく方式つまり演繹的アプローチの限界だと言えます。

一方で、AI/MLの世界では、帰納的なアプローチで物事を解決しようとします。
帰納法的なアプローチでは入力したデータからある結果が導き出される場合に、内部でこういうロジックが動いているのではと推定するということになります。帰納法で物事を解決するためにはまずデータが必要で、それもデータ量が多いほど精度があがっていく傾向があります。
昨今はインターネット上で様々なデータを利用できる環境が整ってきていますし、IoTをはじめとする入力の手段も増え、データの取得も容易になってきています。コンピュータの性能も飛躍的にあがってきていますので、このアプローチの優位性が高まっています。

 
次回のブログでは、このサプライチェーン・コントロールタワーを実現するデータプラットフォームについて、書かせて頂きます。

 
サプライチェーン4.0実現への近道 Part1 はこちら
 


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佐藤 比呂志 (Hiroshi Sato)

大手、先進的ユーザー企業にて、大規模開発プロジェクトに従事した後、米国大手IT企業にてソフトウェア製品の製品サポートを経て、製品エンジニアリングマネージャとなる。1996年より米国インターシステムズ社とのInterSystems Caché® の日本語版共同開発プロジェクトの日本側責任者を務め、その後、日本でのCachéの販売、マーケティング、コンサルティング、製品サポートなどビジネス全般にわたる窓口を担当。2001年インターシステムズコーポレーション入社。2003年インターシステムズジャパン株式会社設立と同時に転籍。 ロジスティクス営業部 部長

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