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サプライチェーン4.0実現への近道
Part1 日本の物流システムの現状とSCM4.0

世界でも高いレベル誇る日本の物流システム。しかし担い手の負担や非効率なプロセスが問題になっています。

サプライチェーンの視点で日本の物流業界を見ると、その目的が「コスト削減」になってしまっているのが現状です。もちろんサプライチェーン管理(SCM)本来の目的は、コスト削減ではなく「利益の最大化」です。

このコラムでは3回にわたってSCM4.0(サプライチェーンマネジメント4.0)を実現するソリューション「サプライチェーンコントロールタワー」について解説します。
Part1の本稿では、 SCM4.0(サプライチェーンマネジメント4.0)の概要と、SCM4.0の実現に必要なデータについてご説明します。

関連リンク:サプライチェーンコントロールタワーとは?

インターシステムズジャパン株式会社
ロジスティクス営業部 部長 佐藤 比呂志

インターシステムズは、2021年10月7日に「InterSystems Supply Chain Innovation Forum 2021 -SCM4.0とサプライチェーン全体最適-物流クライシスからの脱却」を開催しました (レポートはこちら)。

セミナーでは時間的な制約もあり、全てが伝えきれていないと感じブログ記事も書くことにしました。
従って以下の内容はセミナーで話した内容と大きくは違いがありませんが、いくつか説明を加えたものになっています。

消費者の目線で見れば、日本の物流システムは世界一といっても過言ではないでしょう。昨今ネットでものを注文することは普通に行われていて、しかも翌日配送はあたり前。ものと場所によっては、朝注文したものが夕方に届くということも珍しくなくなってきています。この日本の物流システムの優秀さは、違う観点でも証明されています。

例えば、かなり古い話になりますが、フランスのカルフールが日本の小売業界に風穴を開けるべく鳴り物入りで日本市場に参入を試みましたが、数年後にあえなく撤退し、イオンに日本の事業を全て売却しました。最近ではドイツのメトロが同様に日本市場からの撤退を決定しました。米国のウォールマートも西友を買収することで日本市場の攻略を試みていましたが、最終的にファンドに大部分の株式を売却しています。海外で実績のある実行力も資本力もある彼らをもってしても高度に発展した日本の物流システムに対抗しきれずに日本の消費者の支持を得られなかったということでしょう。

これも日本の物流に関わる方々の今までの途方もない時間と労力を費やした血のにじむような努力の結晶であることは間違いないでしょう。しかしながら便利さに慣れてしまうとそういうことに思いを馳せることがなかなかできなくなります。そして一方で、消費者は、この便利さがずっと続くと思っていますが、裏では様々な困難が持ち上がっていてこの確立された優秀なシステムの維持が難しくなってきています。

まずこの消費者にとって非常に都合のいい状態は、一方で物流システムの担い手の皆さんには過剰な負担がかかっており、しかもそのプロセスは、必ずしも全てが効率的なものではなく、人手による非効率な作業がまだたくさん含まれています。その非効率な部分を物流に携わる皆様の身を粉にするような働きでなんとか問題を顕在化しないようにしているのではないかと思います。今後、特に日本では働き手となる生産労働人口が減少することを避けることができず、このまま放っておけば、状況が急速に悪化するのは目に見えています。

そして、今までの改善が比較的目に見えやすいもの、人が理解しやすく、改善指標を示しやすいもの、個別の対応が行いやすいものを中心に行われてきた経由があります。一方で、その部分での改善はほぼやりつくした、あるいは、改善努力をしたところで改善効果があまり望めない状況になりつつあるのではないかと思います。

しかし、少し視点を変えるとまだまだ改善の余地はありそうです。言い方を変えると、部分的な最適化はある程度やりつくしたけれども、全体的な最適化はまだほとんど手つかずな状況であると言えます。そこで物流システムよりはより上位の概念であるサプライチェーン管理(SCM)の視点で見てみると少し異なる風景が見えてきます。

 
ところでSCMに対しても日本ではまだまだ誤解があるのではないかと思います。

https://www.intersystems.com/jp-data-excellence-blog/wp-content/uploads/sites/25/2021/10/isj_supply_chain_seminar_01-1024x576.jpg

SCMというとそれは徹底的な効率化によってコストを最大限に抑えることと何となく理解している人が多いのではないかと思います。実は、私もそう理解していました。今回セミナーで講演するにあたって、事前調査のためにインターネットでSCMを検索してみました。

そうするとSCMの本来の定義は、
必要なものを必要なタイミングで必要な場所に必要な量だけ準備し、届けるための構想、計画、実行・統制、検証のマネージメントサイクルであって、コスト削減は目的の一つではあるけれど、むしろ売り上げ、利益の最大化の方が重要ということです。

これは非常に重要なポイントだと思います。

週刊ダイヤモンドという経済誌がありますが、その2021年8月28日号が「安すぎ日本」というタイトルでした。気が付いたら日本は諸外国に比べて賃金の安い国になってしまったという話です。物流業界に限らず、日本人のより良いものをより安くという善意に基づく行動の帰結と考えると少し悲しくなりますが、これはかなり真実を含んだ指摘でしょう。私のような物流の素人にいわれたくないと思われるでしょうが、ここはやはり発想の転換が必要ではないかと思います。つまり、物流を単なるコストと捉えるのではなく、それは立派な付加価値なので価格を上乗せしても良いのではないかという発想を持つことです。

私のような素人がせいぜい考えられるシナリオは、顧客の都合の良いタイミングで商品を届けることができれば、中身は全く同じ商品でも価格は多少高くても良いと考える人はいるのではないでしょうか?(逆に再配達をするということは余計なコストが余分にかかっているわけですが、その分現状は価格に転嫁できていないわけです)くらいですが、知恵を絞ればまだいろいろなことが考えらえると思います。

何十年も続いた慣習をそう簡単には打破できないでしょうが、このまま均衡縮小の道を突き進むよりは、状況好転の道を模索するほうが良いと思いませんか?理想的にはより良いものをより高くというのが本来あるべき姿ではないかと思います。

 
つぎにSCM4.0について少し話をします。

SCM4.0は人によってはサプライチェーン4.0と呼んだり、非常に近いものとしてロジスティクス4.0というものがあります。これは主にEU加盟国、特にドイツを中心に提唱されているIndustry 4.0から派生したイニシアティブです。そして何故4.0なのかというと一応定義があり、以下のようになっています。

  • SCM 1.0 - 輸送の機械化
  • SCM 2.0 - 荷役の機械化
  • SCM 3.0 - 物流管理の機械化

SCM 1.0 では、輸送手段、つまりトラック、鉄道、船舶、飛行機等の発達を上げています。
SCM 2.0 は、倉庫内の作業の機械化、フォークリフト、自動倉庫、マテハンと呼ばれる倉庫内作業を効率化する機械の導入が進みました。
SCM 3.0 ではITを利用して物流管理を行うようになったということです。その結果WMSやWCS、TCSといったシステムの導入が進んでいきました。

日本の物流システムはこの部分で非常に頑張った結果、世界に類をみないくらいの洗練されたシステムの構築ができているといえます。そして SCM 4.0 の定義が省人化、自動化となります。

3.0で機械化はかなりの所まで進んだけれども、人が行わなければならない作業、判断がまだ多量に残っていて、それを効率化することに主軸が移りつつあるということです。そして省人化、自動化を進めると人手による作業に比較して属人性を排除してプロセスの標準化をしたり、AI/MLを活用することで、結果のばらつきをなくすというような効果が期待されています。(人の場合は、融通を聞かして臨機応変に対応できるメリットがある一方、同じ情報を与えられたとしても同じように反応、行動するとは限らないけれども、機械やコンピュータの場合は、同じデータを与えられれば同じように反応する)

日本でも国レベルでの物流の課題に対する取り組みがあります。それは内閣府が主導しているSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)と呼ばれる取り組みの1つであるスマート物流サービスというテーマです。ここでは、非効率なサプライチェーンという課題を解決するために省力化、自動化の推進、それを実現するための物流・商流データ基盤の構築というのが大きなテーマになっており、その先の目指すべき世界としてSociety5.0の具現化が謳われています。バージョン5.0なのが面白いところです。これは私の想像にすぎませんが、欧州の4.0に対抗して、日本はもっと先をいっているということを表現したくてバージョンを一つ上げているのではないかと思います。そして部分最適から全体最適へのシフトも強調されています。

以上のことから物流システムの変革の大きな1つのポイントが明らかになってきました。

省力化・自動化です。

このテーマをもう少し掘り下げてみましょう。

省力化・自動化とは、操作、作業あるいはそこで必要となる判断を人がするのではなく、機械やコンピュータが行います。機械やコンピュータが人の手を借りずに操作、判断するためには何が必要でしょうか?これは皆さん言わなくてもわかりますよね?

言うまでもなくデータです。

もう少し補足すると、人もデータを必要としますが、人の場合は、多少データに不備があったり、整理されていないデータであっても自らの経験だったり勘だったり、創意工夫でなんとか対応したりします。(そこに逆に属人性が入りこむ余地があったりしますが)一方、機械やコンピュータには、正確で全く不備、不足のない完全なデータが必要です。

もう少し言うと正しいデータを正しい量、正しいタイミングで、正しい対象(機械やコンピュータでもいいです)に提供することで初めて機械やコンピュータは正しい判断を得ることができて、その正しい判断に基づいて正しいアクション(行動、操作)ができるということになります。言葉で書くと当たり前のことを言っているだけであまり難しく感じないかもしれませんが、これは実際に行おうとすると本当に難しいです。

 
次回のブログでは、これらを実現するサプライチェーン・コントロールタワーについて、書かせて頂きます。


サプライチェーン4.0実現への近道 Part2 はこちら
サプライチェーン4.0実現への近道 Part3 はこちら
サプライチェーンコントロールタワーとは? 詳細はこちら
関連リンク:「2024年問題」対策と物流DXの関係性とは? 関連コラムはこちら
関連リンク:サプライチェーンを強靭化するための課題と、実現に必要な要素とは?


レポート記事
InterSystems Supply Chain Innovation Forum 2021 SCM4.0とサプライチェーン全体最適-物流クライシスからの脱却

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