Laboratory 2.0: 精密医療と臨床検査情報学の将来
真の精密医療には、全患者データが必要です。このことは、臨床検査に大きなインパクトを与えます。
私の前回のブログでは、個別化と精密医療の定義が時間とともに変化し、さらに医療データの増大がいかに医療を改善してきたかという現実が、この変化をより正確に反映したものだと述べました。今回のブログでは、精密医療の新しい理解が、技術と情報を通して、いかに創造されたかを検証したいと思います。
Becich医師によると「今日、全ては、画像、長期検査データ、電子医療記録等々からのデータを管理することである。より多くの病理学者が、コンピュータ化された病理学に関わっている。病理情報学は、知見を深め、すべてを支援することのできる多様さとして、見られるようになる。これに、コンピュータ化された病理学から得たより深い豊富な研究による情報・知見が含まれるようになる(これは自身のデータとなる)。これは、精密医療の未来を、よく予見している。」
精密医療のもう少し拡大した定義を、患者の利用できるすべてのデータを、より正確な診断と治療のために利用する、という意味と考えると、結果を達成するためにどのような支援をしてくれるのでしょう。
精密さと正確さは、よく同義語として使われますが、この違いを理解することは、精密医療の重要性と医療制度の目標を理解するのに役立つと思います。正確さとは、特定の測定値を表す言葉で、これは、真実にどれくらい近いかということです。しかし精密さとは、測定するシステムについて説明しています。つまり、同じものを測定するといつでも同じ結果をもたらす点において、いかに優れているかを意味します。測定システムは、正確であることができますが、精密ではないことがあります。また、精密であるが正確でない、そのどちらでもない、またその両方である場合もあります。
では、精密の定義はどうでしょうか。同じものを測定したとき、同じ結果を生成する測定システムの精密さの定義は、精密医療のあるべき姿をどのように補強するのでしょう。
よりよい個別化医療を、徐々に改善することに焦点をあてた用語と置き換えることで、誇大広告から力を与えるものへと変化させることができます。徐々に改善する斬新主義は悪い事ではありません、これは前進することです。それぞれの医師が、より精密になれる能力は、治療のよりよい方法を理解することであり、論理的で賢明でなければ発揮できません。
こうした新しい斬新主義は、ロケットの打ち上げ、あるいは、何百万ドルものディープラーニングプロジェクトではありません。
私たちは、より情報を与えられた診療での精密診療の可能性を、すでに見てきており、精密医療はすでに診療の場にあると言えると思います。ニーズと現実的なアプリケーションの両方には、多少の違いを見ることはよくあります。
精密医療が、目に見える結果をもたらす支援ができる分野としては、行動障害の分野があります。インターシステムズ、ネッツマート、デンバーのメンタルヘルスセンターによる共同プロジェクトにおいて、精密医療は、正確性と精神医学の専門家の精密さを改善する道筋を見出しています。精神医学の専門家にとって、精密医療は、特定の診断以外で、予知インディケータの力強い情報源として非構造化データを利用するニーズがあります。診療を行う上での患者とのやりとりの多くは、患者がどう感じ、どう考えるかという口頭のコミュニケションであるためです。
別の大きな組織では、精密医療は、病気のタイプを基に、医師に診療上の関連やよりよいデータ提供をするビッグデータ分析の課題に、応用されています。患者の特定分析は、膨大なデータのマイニング、操作、表示して、理解、利用しやすい形で医師に提供するという、新しいレベルでの精密医療を推進しています。つまり、より関連のあるデータとよりよいデータ提供の仕方が、医師たちをより精密にしているということです。
よりよい診断をするという点で、画像、臨床検査医は、この新しいレベルでの精密医療の実現に向け、懸命に努力しています。
RSNA 2016(北米放射線年次ミーティング)において、診療のコンテキストの拡大という考えは、放射線医が彼らの作業の精密性を改善する必要性から、鍵となる話題でした。退役軍人省メリーランドヘルスケアシステの画像担当責任者で、メリーランド大学医学部 放射線科 副室長 Eliot Siegel医師は、放射線技師にとって、精密医療がどのようなものであるかについて、以下のような考えを持っています。「統合したいです。ゲノムデータと個別化した患者ケア方法を、統合できるとよいと考えます。そして、電子カルテの情報も他のソースからの情報も、情報はすぐ手の届くところにあって欲しいです。そして、情報はリアルタイムで利用できることが要望です。論文を読みに行くと、その瞬間に利用できる臨床情報すべてを利用したいと思います。これは、2-3か月ほど前に言われていた『ミッションブリーフィング』という概念です。今、情報システムの複雑さと膨大さに対処できるようになりたいと思います。」
放射線技師にとって、電子カルテや他の情報源からの情報をいかに利用するかを再イメージすることが、精密医療です。
オーダーイン、結果アウトというパラダイムの崩壊に向かっており、臨床検査も大変似たような将来だろうと考えています。より高度なゲノムや分子テストを行うことができるようになった進んだ業界であってもです。私の同僚であるMartin Wilkinsonが、 ”Empowering Laboratories of the Future(将来の臨床検査に力を与える)“というEPM誌の記事で、こう述べていました。「変革は重大かつ急務です。特に今、医療サービスへの要求が大きくなっています。この達成には、孤立している検査システム、バックオフィス機能、医師支援を排除し、より臨床的で、前線にあり、診療サービスと密接なものへと変える必要があります。こうした変化を作ることで、病理学者は、臨床的な指標とともに必要な情報が得られ、患者にいつ適切なテストが必要なのかについての意思決定ができるようになります。”臨床コンテキストのニーズ“は、検査における精密医療の適用を加速させます。」
こうした個々のケースにおいて、医師が担当する患者のより多くの情報を与えられ、提供する治療がより精密になるにつれ、一歩一歩、精密医療が形成されていきます。
Laboratory 1.0が、Laboratory 2.0へと再形成されるのを見ている臨床検査技師にとって、患者について総合的情報の拡大が、精密医療への道をどのように整えるかを見ることが、重要な次へのステップとなります。
私たちは、インターシステムズにおいて、「不完全な情報は不完全なケアである」と言っています。そして、それぞれの医師が患者についてのより完全な情報を得る、あるいは少なくともこれまで以上に精密であること支援をし、そして、私たちの顧客に精密医療を提供できるよう、日々、努力しています。