医療組織が、患者エンゲージメントに投資する3つの理由
パート3: マーケティングと顧客維持
前稿では、 インターシステムズグローバルサミットのヘルスケアリーダシップカンファレンスで、個別化医療と患者エンゲージメントの討論のモデレータをした経験を共有させていただきました。これまでの2つの投稿では、患者エンゲージメントに投資する理論的根拠として、 価値に基づくケアと 効率性によるコスト削減を共通して挙げましたが、3回目の今回は、最後の理論的根拠として、マーケティングと顧客の維持について述べたいと思います。
エンゲージされた個別化サービスは、ほぼどの業界でも言われていることです。デリサービスで、お客様の好むサントイッチを覚えているとか、読み始めた本の続編が出た時に、アマゾンが知らせてくれるなど、総じてよい顧客経験という意味から、個別化というものについて、皆様は価値があると考えると思います。
患者自身は医療費の大部分を直接支払わないという事実にかかわらず、こうした個別化された患者エンゲージメントは、医療機関にとっては、ますます成功要因になって来ています。
マッキンゼーによると、この10年間で、雇用主が提供する保険に加入する従業員の控除金額は、120%以上も増加しています。さらに、年間支払う医療費で、消費者が直接コントロールする金額は、今や、3,300万ドルに上り、選択することを通して、彼らは、医療費全体の61%以上に影響を与えることができるのです。
患者エンゲージメントと個別化医療は、しばしば直接医師に診てもらう前に、電子的に始まります。
消費者の 77%が、新しい医師を探すときの最初のステップとして、オンラインレビューを使うと言います。オンラインでの一般的なよい評判は、単にスタート地点にすぎません。患者は、適した言葉で、適した媒体に、適したトーンで、彼らの基準に合った医師について、評価をします。患者にかかわるシステム設計をしているフィリップス・メディサイズ・カンパニー、メディコムイノベーションパートナーのイノベーション担当ディレクターであるネイル・ウィリアムス氏によると、”Internet of Me” (IoM: 個客体験のインターネット)の出現によって、よく整備して動機づけられたメッセージを患者に提供する多くの機会を与えたと言います。IoMは、9歳から90歳までの特化したニーズに合致するよう、彼の会社が個別化しています。
医療のよりよい結果への貢献に加え、患者の直接的な支払いおよび還付という両面から、こうした整備された患者エンゲージメントは、医療組織にとって、お金に変えられるのです。患者保護並びに医療費負担適正化法(ACA)の下、病院利用者による医療機関および医療システム評価(HCAHPS)によって、 メディケア(保険)の支払いの2%が決まるようになりました。
近い将来、カンファレンス参加者はまた、精密医療を通じて、個別化ケアが進められる分野と期待しています。これは、個人のユニークな遺伝子構成を、薬の処方やその他の治療に役立てるものです。
これらは前進しています。障害があるにも関わらず。
インターシステムズヘルスケアリーダシップカンファレンスの参加者は、効率的に患者をエンゲージするために直面した多くの課題について、強調していました。
- 個人についての包括的な医療記録の構築: 医師は情報共有に消極的で、今日、ほとんどの患者は複数のポータルへのアクセスを有しているが、自身の健康全体のほんの断片的な情報しか共有されていない。
- 最も健康でない患者は、もっともエンゲージするのが難しい場合が多い。その理由の一端は、動機付けあるいは、自己効力感の欠如にある。
- 危険物質に関するアプリケーションの作成は難しい—臨床的に最大の価値をもたらす可能性のあるこれらおよび他の潜在リスクアプリケーションは、FDA(米国食品医薬品局)でのハイレベルな承認が必要で、これは時間と労力がかかる。
- 個人情報保護は、データが生成され共有が進むほど、難しくなる。
- 過去において、患者エンゲージメントについて、何が上手く行かなかったという理解はほとんどありませんでした。上手く行った話しか、よく聞きません。成功したものと失敗したものの両方を追跡することが、改革者にとって進行中の利点となると思います。
こうした課題に反して、カンファレンス参加者のほとんどの方は、個人でも仕事でも(多くのケースではこの2つは重なりますが)、ある程度の患者エンゲージメントを進めると約束していました。例えば、ロードアイランド・クオリティ・インスティテュートのCEOローラ・アダムス女史は、数年前の自身の乳がん診断を「ギフト」として表現しました。これによって、患者の優先順位と経験を正確に理解し対処できるようになったと言います。彼女やその他の方は、医療における患者中心のモデルの構築について、大きく前進していると言う一方、全体としてのレベルにおいて、よりよい医療の達成には、患者エンゲージメントが必要であると認識しています。患者エンゲージメントの実現は、データのコンテキスト、分析、ビジョンをもったリーダーシップ、そして食品の栄養からよいメディアメッセージに至るまですべてを通して、健康を増進させる環境文化にかかわっています。
数年、医療組織の患者エンゲージメントへの投資に関する強力なビジネスケースが少なったように思いますが、インターシステムズのヘルスケアリーダシップカンファレンスに参加した後、私は、いくつか出てきたコンセンサスを見て、嬉しく思いました。より多くの組織が継続してここに投資をすれば、現地点と患者エンゲージメントがある世界のギャップが近くなり、予防と健康をより強く意識した、より患者とその家族が中心のケアへのアプローチが進んでいくことと思います。
「パート1:価値に基づくケアへの道を整備」はこちら
「パート2:効率性によるコスト削減」はこちら
著者について
Lygeia Ricciardi (@Lygeia)
デジタルヘルス、患者エンゲージメントの専門家。クリアボイスコンサルティング代表。以前は、アメリカ合衆国保健福祉省ONC(IT調査室)において、コンスーマ・eヘルス局を設立し、それを先導した。