あらゆるイベントでは、私は、いつも1つのフレーズまたはコンセプトが目に留まります。マルタ島で行われた2017年の eHealth Weekにおいても、これは例外ではありませんでした。
このカンファレンスの正式なテーマは「Data for Health: The Key to Personalised Sustainable Care (健康のためのデータ:個別化された継続可能なケア)」で、これは、当社が推し進める、患者中心、ケア連携と合致するものです。しかし、このフレーズは、私の目と想像力を捉えました。 European Innovation Partnership for Active and Healthy Aging(EIP for AHA:アクティブで健康に年齢を重ねるための欧州イノベーションパートナーシップ)が公表した 計画書に書かれたものだったからです。
「よりよいケア連携」または「統合されたケア」(私の表現です)は、自然には進んでいきません。
大学の1年を終了した後、私は専攻を物理から医療に変更したのですが、熱力学の第二法則の基本については忘れていません。(ここに比喩が隠されていますが)この法則は、基本的に、システム自身は、時間とともに自然に破壊されていくというものです。破壊を抑制するにはエネルギーが必要です。これが仕事です。破壊を押し戻し、秩序を創造して維持することは、それ以上のエネルギーの投入が継続的に必要となります。これが、正に、このレポートで述べられている事です。
「よりよいケア連携」または「統合されたケア」は、自然には進まず、ケア提供メカニズムの基本を変革する必要があります。つまり、急性期ケア、病院を基本としたケアから、早期予防、集団管理、コミュニティと在宅ベースのケアへの変革です。それらは、革新的な技術に支えられ、市民がより自分のケアに関わること、ケアを提供する人と医療専門家の認識、サポート、参加、ケア専門家の新しい役割と責任、患者のケアに関わる人たちの協調とタイムリーなフォローアップを実現する新しい患者パス、ケアの協調と結果に対するインセンティブを与えた支払者、医療提供者、消費者間のガバナンスモデル(パフォーマンスによる支払いモデルを含む)などです(私見によって強調しています)。
このカンファレンスは、全ヨーロッパにおける、これら全ての分野での進行具合にフォーカスをあてる一方、課題も明らかにしました。大きな課題の1つは、各国を悩ませています―インセンティブを正しく与えること―。1人の参加者が彼の母国についてこう言っていました。「歪んだインセンティブの国」と。私はあえてこの国がどこかを申しません。なぜなら、誰もが自国のことだと思えるからです。
インセンティブの問題以上に、ただ、テクノロジーソリューションを構築する、あるいは購入することによって、私たちの医療システムにある機能不全を克服することができると考える傾向に問題があります。これが、私が「革新的なテクノロジーに支えられる」という2番目のフレーズを強調する理由です。私たちは、基本的に、健康と医療を革新的な医療ITなしに変革させることはできません。しかし、それによって推進することもできないのです。
変革の成功には技術が必要です。そして、多くの労力が必要なのです。