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FHIR Dev Days 2019 を振り返って

FHIR は、大きな流れになってきています。先日 FHIR Dev Days カンファレンスがワシントン州リッチモンドで開催され、多くの海外からの参加者がありました。そこでは、共通の脅威である医療におけるインターオペラビリティ(相互運用性)は、歴史的な転換ポイントを迎えていると強調されていました。新しいものへの世代シフト、より近代的な API は、医師だけではなく、患者や消費者による医療データへのよりよいアクセスを約束するものです。

FHIR は、皆さんご存知かと思いますが、HL7 協会が出している標準ドラフトで、よりよい医療インターオペラビリティのために設計されたものです。特に患者が自分のデータによりアクセスできる方法として、正しくそして流動性のある医療データ交換の選択肢として、これまでの標準である HL7v2 の多くを凌駕するものと考えられています。

FHIR をよくご存じのない人のために、情報交換の基本単位はリソースであるということです。リソースとデータ型は、簡潔な XML のようなフォーマットで表現されていますが、また、詳細なコンテンツ記述も可能です。リソースの例としては、患者、組織、予約、通院、観察などがあります。

FHIR が適用されるスピードには、驚くべきものがあります。元々、オープンなインターオペラビリティ標準を進めるために2014年 Argonaut プロジェクトとして開始され、非常に高速に受け入れられています。現在、試用のための第2版ドラフトは、病院の80%、急性期診療所の70%で利用されています。マイクロソフト ヘルスケア事業部のバイスプレジデントは、FHIR について「ファーストクラス」データ型であると認識し、FHIR データ交換が、この10年で実質的に一般に使われるようになると信じています。

この成長に貢献した2つの力があります。1つは、成熟度です。最初の ”normative (標準的)” FHIR リソースは、FHIR R4 リリースとして2018年12月に発表されました。”normative” は、その標準が前進し変化するということが、リソースを壊すことはないという意味です。normative とは、ある程度の成熟したユーザが、普通にプロダクションシステムに利用できることを示唆しています。約25-30のリソースが、2020年10月に暫定的に予定されている R5リリースで ”normative” にサポートされます。これは、大きな開発と言えます。

FHIR の成長に貢献している2つ目の力は、連邦政府からの強い圧力です。Title IV of the 21st Century Cures Act (21世紀治療法)と呼ばれているものです。米国議会は、消費者がAPIを通して彼らの電子医療記録へのアクセスが必須だとしています。それは、透過的で、無料あるいは最小の費用で、かつオープンで競争を促進するものでなければならないとしています。標準的な医療・健康のデータセットは、処方、検査、その他を含む約40項目の情報を包含しており、FHIR を通して利用可能になるでしょう。導入の予定表は不確定ですが、2020年末までには終了するでしょう。ONC (アメリカ保健福祉省国家医療IT調整室)は、INFERNO (https://inferno.healthit.gov/)と呼ばれる FHIR サーバ認証のコミュニティツールを開発しました。これは、FHIR R2と、現在 FHIR R4を完全にサポートしています。

オープンソースコミュニティは、FHIRリソースが動作するいくつかのツールを開発し、カンファレンスでデモンストレーションを行っていました。1つは“Forge”と呼ばれるもので、FHIR プロファイル作成に使います。FHIR 仕様は、基本リソースセットとフレームワークを記述しているだけで、APIは、異なる医療コンテキストで使用可能です。しかし、医療機関、要求、規制、教育、行動の中で、異なる部分があります。これらは、実現可能であり、そして、あるいは、利点でもあります。(https://www.hl7.org/fhir/profiling.html をご覧ください。)

Forge では、ユーザは 以下の開発にグラフィカルエディタを使う事ができます。

  • 基本仕様にないもので、どのリソースエレメントが使われ、どの追加エレメントが追加されるかについてのルール
  • どのAPI機能をどのように使うかについてのルール
  • 特定のエレメントでどの用語が使われるかについてのルール 
  • リソースエレメントとAPI機能が、どのようにローカル要求およびインプリメンテーションにマッピングされるかについての記述 

その他にデモが行われたツールは FHIRPath で、XPATH のような パスベースのナビゲーションおよび抽出言語で、現在 STU1リリースに入っています。FHIRPath は、開発者がリソースインスタンスのナビゲート、パスのポイント、または、自身の検索パラメータ定義が可能です。FHIRPathは、今年後半に “normative”になる予定です。

セントラル・スクエア・ソリューションの FHIR および医療データ標準担当のプリンシパル、ダニエル・ゴットリーブ氏は、Bulk FHIR リソースについて、力を入れて開発をしており、FHIR データのバルク取得する容易な方法になることが確実だと述べていました。非常に多くの第三者のプログレスノートを EMR へ同期する、EMR と集団健康管理システムを統合する、機械学習を導入するなどユースケースが考えられます。クエリは、非同期リクエストを使い、セキュリティにはパブリック/プライベートキーを導入します。“ndjson”、または、ライン特定JSON で FHIR レコードを分割します。トライアルでの FHIR 導入は、サーナ社、エピック社と一緒に、POC として行いました。また、FHIR コネクタソンで、さらに整備されています。現在、エクスポートのみですが、インポートも計画をされています。

HL7 協会の名誉会長で、HL7 の創設者であるエド・ハモンド博士は、このカンファレンスのクロージングで述べた言葉が、FHIR について最もよく総括したものだと思います。「FHIR は、新しい産業界のアプローチに基づいた仕様です。しかし、HL7 v2, v3、RIM、CDA の定義と利用における要求、成功、課題に基づいています。FHIR は、電子医療記録の利用・発見・交換を可能にするために不可欠なものです。」

同意します。私は、インターシステムズが FHIR を世の中に出したことを、大変誇りに思います。

 

Patrick W. Jamieson パトリック・W・ジェイミソン

医師、InterSystems IRIS for Health のプロダクトマネージャー。初期のキャリアでは、メディカルエクスパートシステム情報学を研究する傍ら、ピッツバーグ大学での神経科で臨床を行っていた。その後、サーナ社でリアルタイム意思決定支援システムのプロダクトマネージャーに転身。以降、自然言語処理の会社を設立し、6つの特許を取得。予測分析、ゲノムに特化したいくつかのスタートアップ企業に従事した経験をもつ。専門分野は、人工知能(AI)と機械学習、自然言語処理、および臨床意思決定支援。
 

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