HL7 FHIR は新しい時代に医療情報活用基盤になれるか

オブジェクトマネージメントグループ OMG アンバセダ
グローバルシステムアーキテクト
長谷川 英重

 
HL7 FHIR 国際標準化作業の舞台裏?
今まで国際標準化作業は各国から多数の専門家が参加し、長時間をかけ慎重に仕様を決定、段階的適用を続けていました。新プロジェクトとして取組まれている HL7 FHIR は全く新しいアプローチで、時代に合わせた幅広い適用分野に、容易に素早い適用を目指した正式標準化開始は2012年に始まりました。その開始準備や決定に長時間をかけ、さらにその後3回の試用版が提供され、新機能を先に2018年12月に正式版提供、既存対応は2年後の改定版提供が発表されました。

新しい令和時代の幕開けに合ったことは日本にとっても意義あることと感じます。医療IT国際標準化に携わる者から見た作業の一端をご紹介します。

 
HL7 から再び HL7 へ
世界に幅広く支部を持つ HL7 で医療情報メッセージ交換に続き、詳細な臨床に関するモデルが検討され、2009年から ISO 化提案が行われました。今迄競合にあった EU と米国は2010年末に標準化他の協力協定を締結しており、2010年に臨床情報モデリングイニシアテブ CIMI が米国ユタ州の Stan Huff 博士(以下博士)リードで設立され、世界中から専門家100名以上で提案モデルの妥当性を検証しました。

博士は臨床現場の複雑さを、手術台周りの色々な測定機器間の複雑なケーブル接続写真を示し、詳細なデータモデル、これから実現するシステム構成(最下層の電子カルテとそれに接続するデータとドキュメント対応 FHIR、その上にサービス、モバイルや解析アプリに接続する FHIR の合わせた2層)を実使用システムベースで示し、合わせて関連する実際のデータモデル、変換ツール、レジストリを示しています。この図表を10年近く使用し、活発に討議されました。

2014年、軽井沢で ISOTC215 (医療情報)会議開催後、博士を招き東京で CIMI セミナーが開かれました。
CIMI 中で検討したモデルは ISO に反映され合わせて世界中に実装を保証するモデル化を OMG に提案し、2018年にアーキタイプモデル言語 AML として発行されました。その後 CIMI は継続的な活動のため HL7 の1作業グループ WG として継続され、週レベルで会議を継続しています。一方博士は、その後 HL7の会長を務め、米国政府医療IT諮問委員を務めるなど医療 IT 分野で幅広く活躍をしています。

 
HL7 FHIRはHL7の救世主か?
HL7 FHIR プロジェクトが設定される以前、既に世界中で使用されている HL7V2、カナダ英国他限られた V3 使用に対応し相互運用性を改善するプロジェクトを長期間進めていましたが、関係者の同意が得られず、米国政府に政権交代で政府自らヘルスインターネット(Direct RESTful メッセージ)プロジェクト立ち上げ短期間にオープンソースで相互運用性のあるシステムを全米に広げています。

政府から要求仕様を受け対応を検討する中、HL7 参照情報モデル RIM を考慮したデータモデル(FHIR リソース)提案を受け、HL7 FHIR が誕生し、継続して関連者の支援を受けて次々にプロジェクトが立ち上がり、米国政府の協力を得て全米はもちろん、全世界への展開が進められています。HL7 FHIR は HL7 のみならず、すでに進められているアーキタイプとの連携を含み、米国はじめ世界の救世主の可能性も秘めています。

 
HL7 FHIR の今後は?
HL7 FHIR は荒波の中で誕生し、かってない変革の中にいます。2年に一度開かれる世界医療情報学会 IMIA の MEDINFO2019 は今年フランスリオンで開催され、トップテーマに FHIR が挙げられており、今後の世界的展開が予想されています。欧米を中心に医療情報交換環境はこの10年大きく進展しており、集められたデータをどのように利用するか、そのために医療者負担を少しでも減らすかに大きな関心が払われています。しかしこうした要請に HL7 FHIR だけで対応することは困難で、既存の色々なシステムとの連携が極めて重要になります。

例えば、インターシステムズ社のように、世界の主要医療機関に医療情報の交換や、利用支援を行う Epic 社に米国で最も伝統のある医療用DB(Caché ‐キャシェという医療以外でも多用されている)を供給する一方、医療 IT を米国中心に世界中に広めている HIMSS などを通じて HL7 FHIR 拡大を積極的に PR し、最新の IRIS システムなど AI や IoT などユーザ負担を最小限にしながら FHIR 活用を効率的に進めることを目指しています。また 同社の EHR 製品 HealthShare Unified Care Record をはじめ、世界の多くのツールベンダーは FHIR 対応を行いこれからの波に乗ろうとしており、これらをうまく活用することが有効と思われます。

 
最後に。筆者は米国駐在を含みIT業界に50年以上、国際標準化、医療ITに25年以上携わっていますが、医療ITが今ほど活発な取り上を経験したことがありません。
AI がいろいろ身近に議論されていることに隔世の感があります。グローバルなシステムに関する情報を日々取り扱う中で、海外システムと日本の国内システムがつながっている中のシステム理解をより容易に正確にできるための努力を進めたいと感じています。
 
 

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