金融サービスのための InterSystems IRIS Data Platform
InterSystems IRIS® Data Platformは、高パフォーマンスのミッションクリティカルな金融サービスアプリケーションに理想的なテクノロジです。メッセージレートや分析ワークロードが予期せず急増した場合でも問題なく、パフォーマンスを損なわずに、非常に高いトランザクションワークロードと大量の分析クエリに同時に対応できるよう最適化されています。その他のテクノロジよりも優れたリソース効率とコスト削減を実現し、既存のデータ管理インフラストラクチャを害することもありません。
InterSystems IRISの中核を成すのが、拡張性、信頼性、セキュリティを損なわずにトランザクションや分析の処理を高速化する、マルチモデルデータベースです。データを一切複製することなく、リレーショナル、オブジェクト、ドキュメント、キーバリュー、多次元データを 共通の永続的なストレージ層で扱います。
永続性を備えた高パフォーマンスでのトランザクションワークロードの処理
InterSystems IRISの高パフォーマンスなデータベースは、インメモリデータベースと同等以上のトランザクション処理スピードと永続性を備えています。このデータベースは永続的なデータストアであり、常に最新の状態を維持します。マシンが停止してもデータは失われず、データベースのリカバリや再構築の作業は不要です。
このInterSystems IRISの優れたデータインジェスチョン機能を支えているのは、多彩なデータ構造でデータを効率よくコンパクトに格納することのできる高度なデータエンジンです。2次元テーブルではなく、スパースストレージ技法に基づく効率的な多次元データモデルを使用することで、データのアクセスと更新が高速化され、使用するリソースとディスク容量が削減されます。従来のTCP/IPでアクセス可能なAPIに加えて、インメモリ、インプロセスのAPIも利用できるため、データインジェスチョンのパフォーマンスがさらに向上します。
高パフォーマンスでの分析ワークロードの処理
InterSystems IRISは、SQLのフルサポートをはじめとする多彩な分析機能を備えており、金融組織は、既存のSQLベースのアプリケーションを、ほとんどまたはまったく変更せずに使用できます。このデータベースは効率的な多次元構造でデータを格納するため、従来のリレーショナルデータベースと比べ、SQLアプリケーションのパフォーマンスが向上します。さらに、オブジェクト、ドキュメント、キーバリューデータ、非構造化データなどの他のデータパラダイムをネイティブにサポートしています。
分析ワークロードの高速な処理性能は、独自のアプローチによるリアルタイムのインデックス作成(トランザクションビットマップインデックス)により実現しています。これにより、トランザクションのライブデータでの複雑なクエリの処理速度が大幅に向上します。ほとんどのデータベースでは、行またはオブジェクトの値のIDリストを保持する従来型のインデックスを使用しています。一方、ビットマップインデックスには、考えられる列値またはプロパティ値ごとに個別のビットマップが格納されます。ビットマップインデックスの利点は、データベース全体をくまなく検索しなくても、ブーリアン演算を実行することで複雑なクエリを処理できることです。その結果、大量のデータを検索するクエリの応答時間が100倍以上向上します。
しかし、従来のビットマップインデックスでは、インデックスの更新が遅くなることがあります。さらに、こうしたインデックスでは、大量のストレージを必要とするためにデータベースでの使用が制限されることもあります。特に、リアルタイムでのトランザクションデータの分析が必要な場合です。InterSystems IRIS独自のトランザクションビットマップインデックスでは、多次元データ構造を活用してこれら2つの問題を解決しています。これによりビットマップは迅速に更新され、多くの場合は従来のインデックスよりも高速化されます。さらに、高度な圧縮技術により、ストレージ要件が大幅に緩和されます。結果として生まれたのが、極めて大きなデータセットを検索し、分析クエリで「ライブ」データを大規模に高パフォーマンスで取り込むことのできる、超高速のビットマップです。
また、InterSystems IRISは、組み込みの機械学習(ML)ランタイムエンジンも装備しています。これによって、データベースエンジン内で機械学習モデルをネイティブに処理し、優れたパフォーマンスで不正検出、ポートフォリオモデリング、コンプライアンス、その他のリアルタイムの予測的および処方的な利用が可能です。
最後に、InterSystems IRISは、非常に大規模なデータセットで高度な分析クエリを実行できます。たとえば、データを複数コピーするのではなく結合することで、異種のノードやシャードに分散しているデータに極めて高速で効率的にアクセスできるようになります。その結果、組織でははるかに多くのデータを分析用に収集し、高速でリソースの使用率を低く抑えながら、下流のアプリケーションと分析のアドホッククエリを実行して、より正確な新しい洞察をデータから得ることができます。
またこの機能は、コンピューティングリソースを抑えながら、より小さな処理ウィンドウで非常に大規模なデータセットを処理する必要がある、バックオフィスアプリケーションの多くにとっても理想的です。
トランザクションと分析を同時に
InterSystems IRISは、最高レベルのパフォーマンスをトランザクションと分析の両方のワークロードで大規模かつ同時に実現します。どちらのタイプのワークロードでも、パフォーマンスが損なわれることはありません。注文量が増加し、システム上のトランザクションと分析のワークロードがいずれも増大しているため、処理スピードや可用性を損なわずに、こうしたワークロードの増大に対処する拡張性がデータプラットフォームに求められています。これは、市場が不安定な時期に特に顕著になります。InterSystems IRISには、こうした要求に応える複数の機能が用意されています。
1.エンタープライズキャッシュプロトコル: マルチワークロードでの優れたパフォーマンスと拡張性を実現するためにインターシステムズが開発した独自の技術が、エンタープライズキャッシュプロトコル(ECP)です。ECPの主な利点としては、ワークロードのタイプ(トランザクション処理または分析クエリ)と負荷に基づいてリソースを自由に拡張できることが挙げられます。ECPは、インジェスチョンから消費にいたるマルチサーバ環境のデータフローを最適な状態に調整します。さらに、SQLでデータを複製したりブロードキャストしたりすることなく環境内のすべてのデータにフルアクセスできるようにします。
ECPを使用すると、分散システムのサーバはアプリケーションサーバとデータサーバの両方の役割を果たすことができ、ローカルデータベースと同様にリモートデータベースにも動的にアクセスできるようになります。データのプライマリ所有権を必要とするのは、分散システムのごく一部のサーバだけです。分析の要求が増えた場合は、アプリケーションサーバを即座に追加できます。ディスクのスループットがボトルネックになっている場合は、同様にデータサーバを追加でき、データベースは論理的に再パーティション化されます。
分散システムの各ノードは、それぞれのディスクシステムにあるデータを処理することも、ECPによって別のデータサーバからそのノードに転送されたデータを処理することもできます。クライアントがデータを要求すると、アプリケーションサーバはそのローカルキャッシュを使用して要求を処理しようとします。データがローカルにない場合、アプリケーションサーバはリモートデータサーバにそのデータを要求します。これにより、そのデータはローカルアプリケーションサーバにキャッシュされ、そのサーバで実行されているすべてのアプリケーションで使用できるようになります。
ECPは、キャッシュの整合性と一貫性をネットワーク全体で自動的に管理します。ECPを使用するといっても、ユーザは特に何もする必要はありません。アプリケーションの変更も専門的な技術も不要です。アプリケーションは、データベース全体をローカルにある場合と同様に扱います。
2. 高度なメモリ管理手法: InterSystems IRISでは、高度なメモリ管理手法を用いて高パフォーマンスと高可用性を実現しています。インメモリデータベースの多くはメモリ管理をOSに依存しているため、高負荷ワークロードの処理中にメモリリソースが不足するおそれがあります。InterSystems IRISは、起動時に連続したメモリチャンクをOSに要求し、その後はOSとは無関係にそのメモリをインテリジェントに管理して最適化します。高負荷ワークロードの処理中に、割り当てられたメモリが完全に使い尽くされてしまう可能性があります(そうしたことが予測されます)。その場合は、最近最も使用されていないデータを動的に解放し、メモリも解放して、シームレスに処理を継続します。要求されたデータの一部がメモリ内に存在しない場合は、そのデータをディスクから取得します。
3. キャッシュの最適化: 他の多くのデータベースではマシンで実行しているプロセスごとに別個のキャッシュを保持していますが、InterSystems IRISではマシンごとに1つのキャッシュを保持し、固有のメモリアドレス空間で実行されているプロセスがデータにアクセスできるようにしています。複数のクライアントが1つのキャッシュを共有できるため、マシンごとに保持する必要があるデータのコピーは1つだけです。そのため、ストレージ要件が緩和され、ネットワークI/Oが減少して、拡張が容易になります。たとえば、それぞれに8コアが搭載された250台のマシンから成るInterSystems IRISベースのシステムでは、250のキャッシュだけが相互に通信してキャッシュの一貫性を維持する必要があります。一方、コアごとに別個のキャッシュを必要とするシステムでは、2,000のキャッシュを適切に調整する必要があります。
InterSystems IRISがもたらすパフォーマンスと拡張性のメリットは群を抜いています。組織は、1つのプラットフォームを使用して、トランザクションの量が急上昇しているときでも最高レベルのパフォーマンスと信頼性を実現しながら、トランザクションと分析のワークロードをどちらも損なうことなく、同時に効率よく処理できます。
TCOの削減
InterSystems IRISは、一貫性のある単一アーキテクチャを備えており、さまざまなタイプのデータを扱って、トランザクションと分析のワークロードを処理することができます。複数の技術や技法を習得したり統合したりする必要はありません。さらに、極めて直感的なアプリケーション開発/保守環境を提供し、迅速な実装とアプリケーションの保守の簡素化を実現します。企業は、開発と保守のコストを削減しながら、より少ないリソースでより多くの成果を上げることができます。
システムリソースの使用効率が向上し、必要となるインフラストラクチャの量が減少します。特にインメモリデータベースと比較した場合、インフラコストが大幅に削減されます。
インターシステムズの技術を導入したある金融サービス企業では、以前のDBMSベースのインメモリシステムよりもスループット、パフォーマンス、信頼性を向上させながら、運用コストを75%削減しています。
セキュリティ
金融サービスアプリケーションの場合、セキュリティは絶対に最優先しなければなりません。InterSystems IRISは、以下の機能を備えたシンプルで統合されたセキュリティアーキテクチャを提供します。
- アプリケーションのための強力で一貫性のある、高パフォーマンスなセキュリティインフラストラクチャを提供する
- 証明書標準を満たす
- 開発者がアプリケーションにセキュリティ機能を容易に組み込めるようにする
- パフォーマンスと運用に対する負担を最小限に抑える
- InterSystems IRISがセキュアな環境の一部として効果的に動作し、その他のアプリケーションと連携することが保証されるようにする
- ポリシーの管理および施行のためのインフラストラクチャを提供する
セキュリティは、以下のとおり、認証、承認、監査、データベース暗号化に基づいています。
- 認証ではすべてのユーザのIDを検証する
- 認証によりユーザが必要なリソースのみにアクセスできるようにする
- 監査では事前定義されたシステムとアプリケーション固有のイベントのログを記録する
- マネージドキーの暗号化により未承認の表示から情報を保護する
一般的なセキュリティに加えて、InterSystems IRISは行単位の精度によるセキュリティを提供します。行レベルのセキュリティでは、各行に表示を承認されたユーザまたは役割のリストが保持されます。
InterSystems IRISは、SSL/TLSの使用もサポートしており、公開鍵基盤(PKI)用のツールを備えています。
お客様事例
インターシステムズのテクノロジは、金融サービス業界全体のフロントオフィスからミドルオフィス、そしてバックオフィスまでのあらゆるオフィスで使用される、ミッションクリティカルで高パフォーマンスな広範囲のアプリケーションを支えています。たとえば、インターシステムズのテクノロジは毎日世界中の証券取引の最大15%の処理に使用されています。ある企業では、インターシステムズのテクノロジがグローバルなポストトレード管理機能全体を支えており、ある大手証券会社ではインターシステムズのテクノロジを利用して1,100万件の顧客アカウントを扱う3,000のバックオフィスプロセス全体を処理しています。
高パフォーマンスの取引注文管理システム(OMS)
あるセルサイドの大手投資銀行は、5万人の行員を擁し、運用資産は1兆ドルを超え、世界的に事業を展開しています。この銀行では、高パフォーマンスの注文管理システムに対して、2つの相反することを求めていました。それは、インフラのコストを削減しながら取引量の増加にも問題なく確実に対処するということでした。同行のグローバルな分散システムでは、1日あたり数十億件の注文に対応する必要がありました。さらに、市場が不安定な時期の予期しない取引量の急増にも対処できるよう、十分な余裕を持っていなければなりません。それと同時に、組織全体の300のアプリケーションから送られてくる分析クエリを処理する必要もありました。
同行が以前使用していたDBMSベースのインメモリトランザクション管理システムは、ピーク負荷時のパフォーマンスと可用性に関して深刻な問題を抱えていました。アプリケーションをインターシステムズのテクノロジに移行することで、同行ではスループットを3~5倍、パフォーマンスを10倍向上させて、運用コストを75%削減することができました。さらに、以前のインメモリベースのシステムと比べて、より多くの注文データを分析クエリに取り込めるようになりました。
InterSystems IRISをベースとした実装により、単一障害点が排除されました。各機能コンポーネントはリニアに拡張可能であり、パフォーマンスや信頼性を一切損なうことなく、日々のすべての取引業務を円滑に処理できています。
履歴データレイクとリアルタイムのトランザクションデータに基づく分析
3万5,000人超の行員を擁し、8,000億ドル超の運用資産を有する別のセルサイド投資銀行は、トランザクションの履歴データを分析してエンドユーザのクエリにミリ秒単位で応答するという要件を抱えていました。この銀行は、70年分の履歴データをHadoopのデータレイクにインポートしましたが、Hadoop単独の分析機能ですべての要件を満たすことはできませんでした。
既存のデータウェアハウスは、単純なSQLクエリをサポートしていましたが、(たとえば結合によって)データを関連付けて新たな関係や洞察を明らかにするために必要なSQLクエリを実行することはできませんでした。クエリの多くは、同行のパフォーマンスに関する厳格なサービス品質保証(SLA)が定める200ミリ秒を超えていました。
同行では、インターシステムズのテクノロジを実装してHadoopのデータレイクを補完しました。その結果、内部結合、外部結合、交差結合、ネットワーク間結合などの複雑なSQLクエリを迅速に実行できるようになりました。
従来のSQLクエリは平均で5倍速く実行できるようになり、すべてのクエリを200ミリ秒未満で実行できるようになったので、同行のSLAを満たすことができました。また、リアルタイムのトランザクションデータをはじめとする、より多くのデータを分析に取り込むことで、さらに正確な洞察を新たに得られるようになりました。
まとめ
ますます多くの金融サービス企業が、業界に戦いを挑んでいるかのような、増加する一方の要件に後れを取ることなく対処するため、InterSystems IRISに注目するようになっています。
InterSystems IRISは、最高レベルの信頼性と低総所有コストを実現しながら、トランザクションと分析の両方のワークロードを大規模かつ同時にサポートする必要がある、高パフォーマンスなフロントオフィス向けおよびミドルオフィス向けアプリケーションに最適なプラットフォームです。
また、より少ないハードウェアリソースで短期間に非常に大規模なデータセットを処理する必要があるバックオフィス向けアプリケーションにも理想的です。
詳細については、以下をご覧ください。 InterSystems.com/jp/Financial
出所: ガートナー, マジック・クワドラント 「オペレーショナル・データベース管理システム 」(2019年11月25日)
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