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これからの健康・医療情報プラットフォームの構築に向けて - FHIR への期待

この度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によりお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、罹患された方々には心よりお見舞い申し上げます。また、感染拡大の防止にご尽力されている医療関係者、行政関係者、そして私たちのライフラインを支えてくださっている全ての皆様に心から感謝申し上げます。

 
FHIR への期待

インターシステムズジャパンでは、2018年の春ごろから FHIR に関わる取り組みを始め、それ以来多くの医療ベンダやエンドユーザの方々に新しい医療情報交換規約である FHIR をご紹介し、弊社製品 IRIS for Health HealthShare Unified Care Record を活用した提案を行っています。

提案資料より

日本の医療業界では標準仕様・標準技術の活用を推進される方々がいる一方で、実際の医療 IT の現場での利用状況は欧米ほど普及していないという現実があると思います。私たちも FHIR に関して一体どの程度の興味を持っていただけるのか手探りの状態でした。ところが、実際に活動を始めてみるとエンドユーザの先生方をはじめ、多くの医療ベンダの方々もこの新しい規格である FHIR に非常に大きな興味と期待を持っておられることがわかりました。
医療データを効率的に収集したい、院内のシステム連携コストを軽減したい、患者さんに医療データを開示して医療参加を促進したい、など理由は様々ですが、今の医療IT環境が抱える様々な課題を打破するキーテクノロジとして FHIR への大きな期待を感じています。

 
IRIS for Health の FHIR 機能

IRIS for Health は多様な FHIR 対応ソリューションを構築するための最新の技術を備えています。
もっとも特徴的な機能は、FHIR リソースリポジトリという FHIR の JSON/XML 形式のデータを蓄積する仕組みです。外部のプログラムからは FHIR の標準的なアクセス手法である REST を使い FHIR のデータ= Resource を登録したり、検索したりすることができます。IT エンジニアの方々は SQL を発行してデータ操作や検索ができる RDB をご存知だと思いますが、その IF が REST になり、FHIR の各バージョンのリソース定義を実装したデータストア機能、という説明が FHIR リソースリポジトリの機能としてイメージが伝わりやすいかと思います。

FHIR Resource Repository
FHIR Resource Repository紹介資料

FHIR Resource Repository が提供する検索機能
FHIR Resource Repository 紹介資料 2

4月にリリースされた最新バージョン IRIS for Health 2020.1では FHIR R4 に対応しました。日本で FHIR が盛り上がり始めたときにはすでに FHIR R4 はリリースされていましたので、日本の FHIR プロジェクトの多くは FHIR R4 を基本にしています。また私が参加させていただいている、NeXEHRS 研究会 HL7 FHIR 日本実装検討WGにおける標準化活動でも FHIR R4 をベースにしています。

FHIR リソースリポジトリ以外にも、HL7v2 や CDA などの既存のデータから FHIR データを生成するデータ変換機能、FHIR のデータをオブジェクトとして操作するプログラミング機能、外部の FHIR サーバとの Interoperability 機能など、様々な FHIR ユースケースに対応できる機能を提供しています。

 
総合力の高い FHIR プラットフォーム

FHIR データプラットフォームとしての IRIS for Health の価値は、“FHIR” に関する機能だけではありません。IRIS for Health には、ユーザ/クライアント認証のための使用が推奨されているOAuth2に関する機能や、REST を使った API 機能を活用したアプリケーション開発に欠かせない API Management 機能を提供する InterSystems API Manager(IAM) の機能など、FHIR アプリケーション開発に必要となる機能を多く揃えています。何より”データ“プラットフォームにとっては最も重要な、堅牢でスケーラブルなデータベース機能を提供します。

InterSystems API Manager
IAM 機能紹介資料

 
FHIR DevDays への参加

この新しい FHIR という新しい標準技術の盛り上がりを支える重要な要素の一つに、オープンソースコミュニティの関わりがあります。2019年の秋に、アムステルダムで開催された FHIR DevDays というイベントに参加してきました。このイベントはオランダの医療IT企業 Firely 社が主催している世界最大の “FHIR” に特化したエンジニア向けのイベントであり、昨年は30を超える国から450名以上のエンジニアが集まり、120を超えるセッションが開催されました。

参加している企業の幅も様々で、 Google や Microsoft のような大手 IT ベンダから FHIR に特化した医療 IT スタートアップ企業まで参加しており、セッションを通じて様々な FHIR に関する最新技術情報・事例・ユースケースが語られていました。

私が特に興味を持ったセッションの一つは FHIR の次のバージョンである R5 に関するセッションです。
R4 では今後大きな変更が発生しないことが保証された Normative に達したのは、医療情報を表現するリソース内ではわずか2つ(PatientとObservation)だったのですが、これが一度に33のリソースが Normative になることが紹介されていました。R5 は段階的な公開を経た後の2021年の初頭にリリースが予定されています。(ただし、COVID-19 の影響があるかもしれません)

それ以外では、FHIR の Profile を作成するツール Forge の解説セッションや、FHIR を検索するための新しい API のクエリ言語としてGraphqlの紹介なども行われました1。YouTubeでは過去の DevDays も含めて一部のセッションが公開されています2

 
これからの新型コロナウイルスとの共存時代に向け、 より優れた健康・医療情報プラットフォームの構築のために

今回の COVID-19 パンデミックの影響は私たちの生活様式に大きな変化をもたらしています。日々の感染者数を報告するニュースを目にし、特に公衆衛生専門家の方々のコメントや情報発信を通して、多くの人々が公衆衛生(Public Health)という概念とその重要性を感じたのではないでしょうか。

日本では COVID-19 発生当初は手書きや FAX による感染者発生の報告を行い、感染者・濃厚接触者の方々とは主に電話等で状況ヒアリングを行っていましたが、5月末からは関連する組織・個人の業務負担軽減および情報共有・把握の迅速化のために、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム(HER-SYS)が稼働を開始しました。今後の感染状況の把握、拡大の防止に力を発揮してくれることが期待されます。

海外に目を向けると、台湾は COVID-19 パンデミック発生直後から優れた健康・医療プラットフォームを活用し、感染拡大防止に成功しました3
台湾ではこれまでに構築を進めてきた PHR/EHR などの健康・医療情報プラットフォームをフル活用し、感染疑い市民のスクリーニングや患者の状況把握を行いました。さらには外部システムとの連携により渡航歴のチェックを行ったり、PHR と連携して感染拡大防止に重要な役割を果たすマスクの円滑な配布と買い占め防止に成功するなど、喫緊の課題に対してITをフルに活用しました。
詳しい内容は NRI 社のサイトで公開されています(こちらのレポートに記載されています4。)

こうした優れたプラットフォームの構築は、一朝一夕で達成できるものではありません。電子カルテ普及率のさらなる向上など取り組むべきことはいくつもありますが、医療情報が FHIR などの標準技術を採用した形で標準化され、スムーズに情報を流通・保存・収集できるようになることはとても重要な要素です。

私たちインターシステムズも、FHIR の活用を目指すパートナー企業やエンドユーザの支援を通して、日本の医療市場における FHIR 普及、また日本の医療 IT の進展に貢献できるよう、引き続き努めていきたいと思います。

 
*1 https://www.hl7.org/fhir/graphql.html
*2 https://www.youtube.com/channel/UCH1DB1ZJbUdC5DOn110lZ_Q
*3 https://www.nhi.gov.tw/english/Content_List.aspx?n=0B98DCEC6E834809
*4 https://www.nri.com/jp/keyword/proposal/20200609_2

 


著者について
上中進太郎(かみなか しんたろう)
2000年コンパックコンピュータ(株)に入社し、2003年インターシステムズジャパン(株)に法人設立と同時に転職。セールスエンジニアとして、主に医療分野のお客様を担当し、院内連携や標準化対応などのプロジェクトを支援。2018年から FHIR の可能性に着目し、日本での FHIR の普及に尽力している。
日本医療情報学会 課題研究会 FHIR 研究会や、NeXEHRS 研究会 FHIR ワーキンググループでも活動中。

 

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