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日本における医療連携システムの課題

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投稿者:インターシステムズジャパン 営業部 紺木孝之

日本では、多くの地域で、地域医療連携システムが運営されている。接続されている施設数や対象地域の規模、システム、協議会の運営費用などの予算(主に補助金)は、それぞれ異なる。また、利用者数が増え続けている地域、伸び悩んでいる地域など、地域連携の実態は様々である。地域ごとに、住民の人口や年齢、生活環境、医療機関の数、医師の人数、旗振り役の方の有無、行政の関与などが異なり、地域医療連携の目的も当然違ってくる。

地域医療連携システムの運営には多くの課題があるが、今日の日本における一番の課題は、地域医療連携システムを持続的に運営していくためのビジネスモデルが確立されていないということである。私は営業という職種ということもあり、様々な地域の様々なお立場の方とお話しする機会に恵まれているが、これは共通した課題だと感じる。

もちろん成功している地域もあるが、多くの地域が初年度は補助金により導入したが、数年経過すると補助金がなくなり、維持が困難になる。維持はしているが、機能の拡張はしたくてもできない、あるいは、システム更新時の費用が見込めず、それ自体がなくなる可能性があるという地域医療連携システムは多い。

このレポートにある米国ニューヨークの地域医療連携組織 Healthix(ヘルシックス)は、州からの補助金と医療機関、保険会社、製薬会社からの資金で運営されている日本でいうNPO的な組織で、年間約17億円の収入がある。その収入により、組織運営とシステムが維持されており、患者や関係施設も多くのメリットを享受している、米国での大きな成功事例である。保険会社からの収入や再入院率に関わるペナルティの回避のための医療機関の投資などHealthixの収入の多くが日本の医療制度では得られないものであるため、この仕組みをそのまま持ち込むことはできないが、維持運営のための収益の仕組みが確立されていることが成功要因であることは間違いない。

ビジネスサイクルを確立しなければ組織や体制やシステムは継続されず、地域医療連携システムを構築するという最初の努力が無駄になってしまう。営業として、いずれ使われなくなってしまうシステムは販売したくないため、ビジネスサイクルを意識した営業活動をしなければならないと常に自戒している。

1つの解として、「代理機関」や「ソーシャル・インパクト・ボンド」などが広がれば、地域医療介護のシステムの維持費用に充てられる可能性は考えられると思うが、これは、今後の発展を待つしかない。

地域医療連携におけるもう1つの課題は、システム側にも存在する。医療は、医療情報参照ビューワー、疾病別地域連携パス、遠隔医療、災害対策など目的毎に個別最適化されたシステムが存在している。医療情報参照ビューワーにいたっては、ベンダーごとに複数存在する地域もある。行政も、感染症・パンデミック対策、救急対策、がんや認知症対策、がん検診の推進、在宅医療や在宅介護の強化、など行っている。これらの医療や行政のシステムが全て連携できたらという声はよく聞く。
地域医療のデータをデータベース化し、それに自治体が持っている行政情報を統合してデータベース化、もしくはシームレスに連携できると、医療や介護の様々なシーンで最新情報を活用し、役立てることができる。

こうして統合されたデータベース、もしくはシームレスに連携したシステムを活用し、疾病予防、介入による重症化予防ができると、患者にとっては喜ばしいし、何より国や自治体の医療費が削減できる。また、保険者の費用負担の軽減という点でもメリットがある。いくつかの地域では介入により糖尿病患者が透析への移行を防ぐことに成功しているという話も直接聞いたが、これに対して国から保険者にインセンティブを与える仕組み(近いうちに実現されると思うが)が実現されれば、医療連携システム維持の一助となる。

また、患者だけでなく健康な人も、これまで以上に健康管理を自分自身で行うことで、付与されるインセンティブがあれば、それは、医療連携システム維持のための良いビジネスモデルになるだろうと思う。

日本における医療連携の課題とソリューションについてまとめたホワイトペーパーもあるので、よろしければ参照ください。
ホワイトペーパー「日本の医療情報連携に見る課題とインターシステムズのソリューション」(PDF)

ビジネスモデルの確立や個別化システムの連携の問題など、医療連携システムにおける課題はまだまだ多いが、インターシステムズは、今後も、医療関係者、行政の方々と協力して、医療連携の課題を解決し、持続可能なよりよい医療の実現に貢献していきたい。

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