米国の臨床参考検査機関は、毎年約 130 億件の診断検査を実施しています。このような検査は専門医療の判断の実に 66% に影響を与えると推定されています1。
こうした検査を行う検査機関は医療サービスにとって極めて重要です。それにもかかわらず、従来、検査機関は医療チームに欠くことのできない重要な一員としてではなく、単に商品としてのサービス提供者とみなされてきました。その最大の原因の 1 つに、医療支出において検査機関が占める割合がわずか 2% にすぎないという事実があります2。 検査機関に対するこのような認識は、検査サービスへの支払い額の減少に現れています。
メディケア メディケイド サービス センター (CMS) は、メディケア アクセス保護法に基づき、臨床検査に対する還付を 2018 年、2019 年、2020 年に 10%ずつ削減しようとしています。また、その後 2 年間でさらに 15% の削減を予定しています。既に薄利経営を強いられているほとんどの検査機関にとって、これはまさに死活問題です。
そのような中、ニューメキシコ州の委託を受けている臨床参考検査機関である トライコーリファレンスラボラトリーズ は、この難局を乗り越えるために単なるコスト削減に頼る道を選びませんでした。
トライコア は、Clinical Lab 2.0 ビジネス モデルへの変革を目指し、サービスを強化することで医療チームに不可欠な一員になるべく、その価値と収益を高めようとしているのです。この変革を実現するのが、InterSystems HealthShare® と トライコア 傘下の ローズグループ によるソフトウェア ソリューションです。
リアルタイム データと臨床検査機関の分析による業績の向上
トライコア 傘下の ローズグループ のソフトウェアは現在、相互運用性エンジンとして HealthShare Health Connect を使用しています。今後は、イノベーションを進めるための技術プラットフォームとして、他の HealthShare ソリューションや InterSystems IRIS Data Platform™ も導入する予定です。HealthShare は、ニューメキシコ全州に広がる トライコアの検査室から患者の縦断的な臨床検査結果をリアルタイムで集計し、これを請求データと組み合わせたうえで、すべてを一元的な医療記録に正規化します。多様なデータを整合性のある単一のフォーマットに変換する HealthShare の機能は、分析や トライコア の価値提案に不可欠です。こうした機能により、トライコア は患者または集団の現在の健康状態に関して、よりタイムリーで行動につながる洞察を医療コミュニティ全体に提供できるようになります。医療保険機関にとっては、自社システムよりも深い洞察が得られます。
期待される導入効果を証明するために、トライコア はニューメキシコ全州に展開する大手医療保険機関とメディケイドのマネージド ケア機関 (MCO) と協力してパイロット プログラムを実施しました。このプログラムは、喫緊の課題を抱えた専門医療である妊婦健診および産後ケアに注目し、ケアの品質とパフォーマンス指標を高めることを目指しました。
実際の現場での実証
米国医学研究所による報告3 では、2005 年の米国における早産による経済的負担は、乳児 1 人あたり 51,600 ドル、合計 262 億ドル以上に達していたと推定しています。重大な結果につながりかねない可能性、早産にかかる社会的および個人的なコスト、医療保険機関やリスクを被る医療サービス提供者が肩代わりしているコストを明らかにした トライコア のパイロット プログラムの結果は衝撃をもって受け入れられました。
結果は、2019 年に公開される予定ですが、以下の事実を明らかにしています。
- トライコア が妊婦として特定した女性の 65% が MCO の請求データでは妊婦とみなされていませんでした。
- 妊娠人口の 79% にケアの空白期間があることが判明しました (多くの場合、妊娠期間の初回判定によって判明)。
- 妊娠人口の 50% がケアを受けていないことが明らかになりました。
- すべての妊婦の 77% が妊娠第 1 期に確認されました。
妊娠している MCO 加入者の特定に要する時間が短縮されたことで、HEDIS (Healthcare Effectiveness Data and Information Set) パフォーマンス指標が要求する期間内に、妊婦を適切な妊婦健診や産後ケア プログラムに登録することが容易になりました。報告では実例として、妊娠第 1 期に妊婦健診を受診した加入者の割合や、産後 56 日以内に産後ケアを受けた加入者の割合などが示されています。
この研究は次のような成果をもたらしました。
- 新生児集中治療室の占有率が 33% 低減されました。
- 早産が対照群に比べて 40% 減少しました。
- 救急診療部の受診者が 10% 減少しました。
多くの患者が複数の医療サービス提供機関で受診し、各機関が独自の検査を要求する場合があるため、医療保険機関やリスクを被る医療サービス提供者にとって複雑で分析が困難な情報環境が生み出されています。トライコア は、臨床分析と医療サービス提供者とのコミュニケーションを通じて、今回の成果をさらに大きくすることができるユニークな地位を確立しました。
医療チームのリスク軽減と検査機関の新たな収益
トライコア は、その MCO の顧客のコスト節減額が、最も控えめに見積もっても、以下の額に達すると予測しています。
- 早産の減少による 2,278,348 ドルの節減 (1 人あたり毎年 33,096 ドルのコストがかかるとのデータ4 に基づいた値)4
- 新生児集中治療室の占有率低下による 510,203 ドルの節減
- 救急診療部の利用の減少による 56,250 ドルの節減
- $1,540,000 in penalties avoided by achieving • ニューメキシコ州のメディケイド パフォーマンス目標5
リスクを被る契約を締結している医療保険機関と医療機関は、より良い治療結果やパフォーマンス指標を証明するための支援を必要としています。ローズグループ のソフトウェアを擁する トライコア のような検査機関は、こうした支援を提供し、同時に標準的なメディケア料金の支払いスケジュールや検査機関とのサービス契約に縛られない新しい収入源を得られます。トライコア の CEO 兼社長を務める マイケル・クロッシー博士は次のように述べています。「ある大手 MCO は、弊社のデータの方が彼らのシステムが提供するデータよりも優れていることを認め、価値に基づく医療の交渉相手として トライコア を選びました」
1 Ulrich-Peter Rohr, Carmen Binder, Thomas Dieterle, Francesco Giusti, Carlo Guiseppe Mario Messina, Eduard Toerien, et al: The Value of In Vitro Diagnostic Testing in Medical Practice: A Status Report. PLOS ONE 11(3): e0149856, doi:10.1371/journal.pone.0149856. March 4, 2016. 2 Medicare Payment Advisory Commission: A Data Book: Health Care Spending and the Medicare Program, June 2016 3 Behrman R, Butler A, (representing the Committee on Understanding Premature Birth and Assuring Healthy Outcomes): Preterm birth, causes, consequences, and prevention. Washington (DC): Institute of Medicine, The National Academies Press; 2007. 4 Thanh NX et al. Health Service Use and Costs Associated with Low Birth Weight-A Population Level Analysis. (2015) J Pediatr. 167(3): 551-55 5 NMHSD Amendment #8 to the Medicaid Managed Care Agreement Among NMHSD and HCSC http://www.hsd.state.nm.us/uploads/files/Looking%20For%20Information/General%20Information/ Contracts/Medical%20Assistance%20Division/MCOs%20-%20Centennial%20Care/BCBSNM_CONTRACT_AMENDMENT_%238_SIGNED.pdf (Accessed: June 7, 2018)