Baystate Healthは地域社会への奉仕でいかに魔法を見いだしたか
米国マサチューセッツ州西部の医療機関Baystate Healthでは、患者を支援するために革新的な技術が舞台裏で働いている様子を指す言葉があります。「物事がオートマジックに(魔法のごとく自動的に)起こっている」というものです。
最良のケースでは、オートマジックは、検査結果の提供だけでなく、患者と臨床医のエンゲージメントの促進をも目的として構築された患者ポータルの原動力として機能します。予測分析では、健康に関する特定の社会的決定要因が原因で健康リスクを抱えている人を特定するのにオートマジックが利用されます。さらに、3つの地域病院に1,000の病床を持つ統合医療提供ネットワークであるBaystateに診療予約をした患者が予約日時に現れない可能性があるかどうかも判定できます。
Baystate Healthの患者および集団健康技術担当ディレクター、Ken Riley氏は、 インターシステムズ主催のバーチャルリーダーシップカンファレンスで次のように語っています。「いうなれば、このマジックは、患者と顧客に対応するフロントエンドと、医療機関に対応するバックエンドの両方で起こらなければなりません。要するにイノベーションとは、ボタンを押すだけで医療行為を開始し、仕事を完了できるという概念なのです」
患者ポータルや予測分析などのテクノロジは、患者コミュニティに貢献することを目的としたものであり、その患者コミュニティの満足度がBaystate Healthに貢献することになります。そしてこのすべてが、データサイエンティストを雇うことなく実現可能です。その方法は次のとおりです。
コミュニティメンバーとの協力により再設計され、インターシステムズのHealthShare Personal Community上に構築された患者ポータルは、他に類を見ない医療体験を実現することを目指しています。患者は臨床医にメッセージを送ったり、薬局の処方箋を要求したり、COVID-19などに関連する健康状態について確認したりすることができます。
開発中に患者から、患者をケアの中心にしてほしいという要望が寄せられました。そこで、Riley氏とBaystate Healthのチームは現在、患者が特定のデータにタグを付けることで42 CFR 2※1に関連する情報をリアルタイムで編集できるシステムの構築に当たっています。また、オーダー/結果フィードを介してACO(Accountable Care Organization)パートナー間でケアプランを処理および承認できるケアプラン管理プログラムの作成にも取り組んでいます。
さらに、Baystateのチームは、「患者によって、患者のために」設計されたUIを備える患者ポータルを構築して、患者とのエンゲージメントを強化し、患者中心の対話操作を促進しています。ユースケースの一例を挙げてみましょう。メディケイドのACO医療機関と地域の医療情報交換組織が、48時間以内にケアに同意することを患者に求めた場合、Baystateはこの情報を患者ポータルにプッシュすることができ、電話や来院よりも十分な理解が得られます。これら3つの取り組みをすべて統合し、患者が自身のケアプランを患者ポータルを介して承認/不承認できるようにすることが、4年越しのビジョンの最終的な到達点です。
現在、どのような結果が得られているでしょうか。この1年間で患者のほぼ80%にあたる8万人がポータルを利用しました。
一方、予測分析では、Baystate Healthの臨床医の能力があらゆる面で強化されつつあります。
Riley氏は次のように語っています。「長年の懸案事項だった、優れた医療体験の提供を真に実現する予測モデルを作成できるようになりました。世界のAmazonやGoogleのようなサービスが既に達成していることを、医療システムは今まさに達成しようとしているのです」
健康の社会的決定要因に関するデータは、患者に影響を及ぼすあらゆる要因を理解するのに役立ちます。そしてこれが、アクセスを拡大し、結果を向上させるための基盤となります。患者用テクノロジから収集されたデータから、どの患者が血圧測定用カフモニターを使う可能性があるかがわかるため、高血圧患者は限られたリソースから最大限の価値を得ることができます。
しかし最も驚くべきことは、Baystate Healthのテクノロジパートナーのおかげで、このイノベーションのすべてがBaystate Health内にデータサイエンティストを置かずに達成されていることです。これもまたオートマジックの効果の例です。
医療機関において社会的決定要因データを一体化して統合臨床ケアを提供する方法については、 こちらをご確認ください(英語)。
*1: 米国連邦政府が規定した物質使用障害に関する個人情報保護規制
この記事は、HealthShare Connections News Flash No.6(2021年6月21日)に掲載されたものです。