DX推進で課題を解決し
「文化の更新」という期待を超えた改革に成功
日本で最も多くの経皮的冠動脈形成術(PCI、カテーテル治療)を実施している医療法人として知られる 札幌ハートセンター 札幌心臓血管クリニック。2019年、同院では「カテーテル治療のさらなる効率化と地域医療連携」をその目的に掲げてDX(デジタルトランスフォーメーション)に着手しました。
データ中心システムを実現するための取り組みとして、中核のデータ基盤に「InterSystems IRIS for Health」および「InterSystems HealthShare Health Connect」を採用。わずか10カ月で本番稼働した新システムは、メリットとして期待していた業務効率向上やリアルタイム情報共有をもたらしたのみならず、同院の「文化の更新」に寄与しました。
カテーテル治療のさらなる効率化と地域医療連携を掲げてDXに着手
医療法人 札幌ハートセンター 札幌心臓血管クリニックは、心臓血管治療を専門とする病床数85床の中規模病院です。地方にありながら、日本で最も経皮的冠動脈形成術(PCI、カテーテル治療)を実施している医療機関であり、6室設けられたカテーテル室では、1日あたり約30件のペースでオペレーションが実施されています。2室ある手術室でも、ダヴィンチを含む1日数件の心臓外科手術が行われています。
同院はまた、全道の患者を受け入れていることでも特徴があります。30台の車両を保有しており、この車両で連携病院や診療所に医師を派遣、重症者については同院に移送したり、医療機関が近くにない患者に関しては同院自らが送迎サービスを行っています。
2019年、同院はDXの推進を決断しました。そこには大きく2つの理由があります。1つは業務効率化です。同院は「患者を断らないこと」をポリシーとしており、中心医療であるカテーテル室でのオペレーションをさらに効率化したいと考えました。もう1つは、システム上での地域医療連携です。検査値や処方など患者情報が共有できれば、患者の負担を減らせる上に、より迅速な医療が可能になるからです。
カテーテル治療の効率化と地域医療連携、この2点をDXの目的と定め、同院はプロジェクトを具体化させていきました。
データ中心システムを志向して InterSystems IRIS for Health, InterSystems HealthShare を採用
2つのDXの目的を受けて、3つのシステムキーワードが立てられました。それは「最先端テクノロジー」「データ中心システム」「安全性と拡張性」です。これらのキーワードを満たすべく、同院は院内システムのハブとしてプラットフォーム(基盤)を置き、ここに電子カルテや部門システムを接続するシステムアーキテクチャを選択。この方式であれば、データを中心とした柔軟性の高いシステム間連携が図れるだけでなく、段階的に新システムを導入していくことも容易だからです。
このアーキテクチャは、医療に特化して設計されたInterSystems IRIS for Health™ お よ び 医療情報連携プラットフォーム InterSystems HealthShare™ Health Connectを基盤に採用して、インテックが構築した「医療データ連携プラットフォーム」によって実現されました。また、電子カルテには、インターシステムズのデータプラットフォームを利用したコア・クリエイトが提供する「カルテMan・Go!」が選ばれました。パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットでも利用でき、必要な場所に必要なカタチで使用することができる電子カルテです。
こうしたアーキテクチャを構築した 札幌ハートセンターは、18の部門システム、スマホベースの電子カルテを連携させ、業務の効率化と医療安全の向上、環境変化への迅速な対応、ITシステムの品質向上などを実現することができました。
プロジェクトを率いた、ハワイ大学 がんセンター 疫学専門家 兼 医療法人 札幌ハートセンター 札幌心臓血管クリニック DXプロジェクトマネージャーである 岡田悠偉人氏は、次のように語っています。
「InterSystems IRIS for Healthは、iPhoneでいえばOSのような存在です。この基盤を中心に置くことで、電子カルテであろうが、部門システムであろうが、さまざまなアプリケーションを搭載できます。また、ベンダーロックインされることなく、データを中心としたシステム間連携を図ることも可能でした。
インターシステムズは米国で非常に大きなITブランドで、ニューヨークやボストンで地域連携の実績を有していることも、ぜひこのプラットフォームを入れたいと思った動機の一つでした」
業務効率向上やリアルタイム情報共有、そして「文化の更新」が実現
10を越えるシステムベンダーとの契約締結を終えたのは2019年12月。早く導入しなくてはDXの意味がないと考えた同院は、それから何と10カ月間で、コロナ禍という想定外の事象に見舞われたにも関わらず、院内インフラやデータセンター内システム構築、医療データ連携プラットフォーム、電子カルテ、18の部門システムの導入をリモートによる会議を中心として完了。2020年10月には本番稼働を果たしました。
新システムは、早くもさまざまな導入効果を生み出しています。まず、業務効率向上とリアルタイム情報共有が実現しました。従来、カテーテル室でME(medical-engineer)は紙とペンでメモを取っていましたが、タブレットを持ち込んで直接レポーティングシステムに入力するようになりました。
また、看護師もバイタルチェック後のデータを、スマートフォンをかざして取り込んだり、患部の写真を撮って電子カルテにアップできるようになりました。
こうした入力データはインターシステムズ製品を基盤とした「カルテMan・Go!」と「医療データ連携プラットフォーム」を通じて連携され、リアルタイムに全院で情報共有可能になっています。これにより、コックピットの前にいるかのように「今、院内で何が起こっているか」が手に取るようにわかるようになりました。
岡田氏は、今回得た最も大きな効果は「文化の更新」だったと語ります。
「今までは組織に合わせてシステムをカスタマイズしてきましたが、今回は最先端のテクノロジーに合わせて、組織が変わり、新しいワークフローが生み出されました。デジタル化+αで、スタッフみんなが新しい体験価値を得たのです。これこそがまさにDXの真髄ではないかと思います」
今後、DXプロジェクトの第二フェーズとして、サテライト外来との連携のために、地域医療連携プラットフォームである InterSystems HealthShare Unified Care Record(統合診療記録)の導入プロジェクトが開始される予定です。まずは検査値や処方など患者情報を共有して、将来的には、北海道全土のDXを推進したい考えです。インターシステムズおよびパートナー企業と共に、100年続く医療機関として北海道の心臓血管治療を支えたいという同院の願いを、データプラットフォームという立場から今後も全力でサポートしていきます。
お客様ご紹介
医療法人札幌ハートセンター 札幌心臓血管クリニック
所在地:札幌市東区北49条東16丁目8番1号
診療科目:循環器内科、心臓血管外科
オンライン診療:オンライン診療対応可能
概要:医療法人札幌ハートセンター札幌心臓血管クリニックは、24時間救急救命体制の高度心臓血管治療専門施設です。
パートナー企業
株式会社インテック
株式会社コア・クリエイトシステム