
医療情報連携の世界は、今まさに“再構築”の段階に差しかかっている。これまで各国で電子カルテの導入が進み、地域医療連携ネットワークも整備されてきたが、こうした取り組みの多くは基本的に“閉じた”システムとして設計されており、外部との情報接続に対して柔軟性を欠いていた。そのため、異なる医療圏やベンダーのシステムをまたいだ情報連携には多くの課題が残されている。
このような状況を打破するために、近年注目されているのが「ネットワーク・オブ・ネットワーク(Network of Networks)」という構想である。これは、各地域や組織が独自に構築してきた医療情報ネットワークを、上位のルールと技術仕様によって“相互接続可能な仕組み”として再編する考え方であり、医療情報連携の新しい潮流として国際的に支持が広がっている。
このアプローチの特徴は、従来のように情報を中央に集約して一元管理するのではなく、それぞれのネットワークが独立性を保ったまま、必要な時に他のネットワークと安全に連携できる「連邦型アーキテクチャ」を採用する点にある。つまり、個別最適化されたシステム同士を“つなげる”ためのルールと中間層を設計し、全国的・広域的な医療連携を実現しようという構想である。