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活性化する FHIR®

Paediatrician and girl using digital tablet

日本でも注目を浴び始めているFHIR。
日本医療情報学会でのFHIR 研究会の設立や、 HL7 FHIR 日本実装 WGの活動を通して、日本でのFHIR普及に取り組んでこられた東北大学病院 メディカルITセンターの中山雅晴教授より、日本におけるFHIR普及と課題について寄稿いただきました。
FHIRへの期待や実装後に考えられる課題、臨床での有効利用・活用のポイントを探っていきます。


東北大学大学院 医学系研究科医学情報学 教授
東北大学病院 メディカル IT センター 部長
中山 雅晴

 
「二人羽織みたいなものです。」
自分の仕事を聞かれて時々こう答えてしまう。
自分ひとりだと簡単に食べられるのに、二人羽織になると時には額に、そして顎にと、あらぬ方向に箸が動くので、なかなか食べられない。同じように、思った通りの電子カルテやデータベースを開発しようにも、なんやかんやと障壁があって、もっとシンプルに、そして、より効果的に作れそうなものなのに、なぜか遠回りや妥協を繰り返さざるを得ない。もちろん上手く口の中に入ることもあるが、大抵は、自分で思い通りに食べることができたらどんなに楽だろうかとため息をつく。

自分自身がもともと循環器内科医なので、患者さんを診ることや臨床研究をすることが容易になれば良いと思って、日々医療情報の仕事に取り組んでいるのだが、何故か常に隔靴掻痒の思いの中、何とかフラストレーションをモチベーションへと昇華させている。しかしながら、これは私だけの問題とは思えない。アプリケーションをもっと簡便で有用に作ることはできないか、データをもっと自由に扱うことができないか、そう願いながら医療情報の仕事に就いている人は多いのではないだろうか。少なくとも臨床医や臨床研究者に話を聞くと同じような感慨を聞くことが多く、ユーザである彼らに早く理想の環境を構築してあげなければと、少しずつではあるが何とか対応してきている。

 
さて、本稿の主題である FHIR の話。いよいよ FHIR が日本でも注目され始めてきている。
数年前から欧米の医療情報学会に行くと関連セッションが増えており、年々その期待感と熱量が大きくなる印象が増していた。起案者である Graham Grieve 氏も昨年の HIMSS の HL7 セッションで、「昔はこんなに聴衆はいなかったのに」と感慨深く述べられていた。その一方で、なかなか日本では FHIR に触れる機会が少なかった。日本語での情報および学習環境を豊かにすることができないか、また、何らかの実装に取り組む仲間を増やせないかと思っていた折、同じように考えていた人たちと日本医療情報学会の課題研究会のひとつとして FHIR 研究会を起ち上げるに至った。同じく課題研究会の一つである次世代健康医療記録システム共通プラットフォーム研究会(NexEHRS 研究会)もその中のサブグループである HL7 FHIR 日本実装 WG の活動を開始しており、令和になるや否や、多くの研究者や企業からの技術者が参加し、FHIR の活用を議論する場が急速に整ってきている。
集まってみると、実はかねてから準備していた人が結構多いということもわかったし、それ以上に多くの方々が関心を持ちながらも学習機会がなく逡巡していたという話も聞くので、今まさに機は熟してきたと言える。

 
『次世代標準規格』という魅力的なタイトルのみならず、やはり FHIR には多くの人が期待するものがある。
まずは REST 環境を用いた簡便な web 経由のデータ交換を中心にしていることであろう。
HAPI サーバーを始めとして、テスト環境から患者データを抜き出すことはあっけないほど簡単である。また、そのデータ形式もJSONやXMLという、データの中身がわかりやすく、かつ扱いやすいフォーマットのため、アプリケーションを作成する際も柔軟に対応できることが大きな利点である。
それ以外にも既存のデータやドキュメントファイルとも共存できること、世の中にあるシステムの 80% に対応し、そこから漏れるものにも「拡張」を設けることで柔軟に対応できることなどがある。公開されている情報をもとに FHIR 形式によるデータ交換が可能なので、やはりデータの相互連携が容易になるということが一番の魅力である。
こういう点を評価し、アメリカのメジャーなカルテベンダーや誰もが名前を知る巨大 IT 企業が FHIR に対応し始めている点も今後の発展が期待されていることを窺い知ることができる。

 
冒頭に述べたように、アプリケーションが自分たちだけで開発しづらいのも、データベースの構築や拡張が一筋縄でないのも、各医療情報システム間のデータ自体の交換が不自由だからに他ならない。電子カルテや地域連携システム、そして個人の情報を蓄積する PHR、それらのデータがシームレスに繋がること、そしてそれを活用するためのアプリケーションがオープンソースを用いて容易に作ることができるのであれば、我々の理想郷は案外すぐ近くにあるということになるかもしれない。

一方で、FHIR だけが独り歩きをしてしまって、ルール無用のデータ交換やアプリケーションが乱立しては困る。また、データ蓄積に関する既存の財産があるにも関わらず、安易な乗り換え論が幅を聞かせて、スクラップアンドビルトが蔓延るのも望んではいない。折角開発やルール作りの体制が急速に構築されてきている中、是非国全体でガバナンスを発揮する方向に進んで欲しいと願っている。

我々、FHIR 研究会はユースケースにフォーカスを当て、臨床現場および臨床研究の活用のために有用なポイントは何か、そして本当に決定したルールで十分なのかという点を提案し続けていきたいと考えている。

 


11/21(木)-24(日) に幕張メッセ(千葉)にて開催される「第39回 医療情報学連合大会」にて、共催セミナーを開催いたします。
ご来場の際は、ぜひお立ち寄りください。

 
【第39回医療情報学連合大会 ランチョンセミナー2】

日時: 2019年11月22日(金)12:25-13:25(予定)
会場: D会場(国際会議場2階・中会議室201)

演題「FHIR で見える医療情報の近未来」
演者:東北大学大学院医学系研究科 医学情報学分野 教授/メディカルITセンター 部長
   中山 雅晴 先生
座長:一般社団法人医療データ活用基盤整備機構理事長 岡田 美保子 先生

 

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