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精密に言うと - Part 1

A scientist looking at a DNA sequence

Laboratory 2.0: 個別化医療から精密医療へ

精密医療(プレシジョン・メディシン)という概念は、臨床検査とその発展形として価値に基づくサービスの重要な潮流であり、進化し続けています。

一次診断において、米国食品医薬品局(FDA)のWSI(Whole Slide Imaging )が、先日認証したこともあり、臨床検査による精密医療によってもたらされる多くの要素が、信じられないほど出現してきています。

「あらゆる医学の原油は、患者の検査データと診療記録に関連するものです」と、ピッツバーグ大学医学部のバイオ情報部 部長、教授(医学博士)の Micheal Becich氏は述べています。「デジタルフレームワークは、常に臨床テスト、すなわち数値を意味してきました。ゲノム科学はその主流ですが、昨今では、デジタル画像もその領域に含まれます。これら3つは、病理学者の臨床的な頭脳とデータを深く読みトレンドを発見するエンジンと合わせて、精密医療の巨大な力を創造することでしょう。」[i]

しかし、包括的な、この重要で繊細な変革は、個別化、精密、ゲノム医療といった言葉の使われ方の進化をみると、今日における本当の定義を理解する必要があります。

最初に個別化医療という言葉が言われだし、これが、医療の意思決定のカスタマイズ化とゲノム情報に基づく診療によって医学を再形成するトレンドでした。

この業界では、個別化医療については、きわめて長く議論をしている一方、目に見える成果は、非常に少ない。多くの点において、これは予測されたことでした。人間のゲノム情報の解析というエキサイティングな出来事によって、ただゲノムを理解したことで、全ての答えを得たと私たちは思い込みました。しかし、残念ながら、私たちが学んだことは、既に知っていた事でした。ゲノムの複雑さと、無数の潜在的な相関や環境による影響を理解することで、私たちは、自然vs養育による影響という、150年前の議論に引き戻されたわけです。

それ故、個別化医療は、古臭い考えを捨て、あらたなスタートとなる概念を与えるといった改造が必要でした。このことによって、「精密医療」という言葉が、現在起こっている変革をより明確に表現する手段として使用されるようになります。

全米研究協議会が、半期報告書” Toward Precision Medicine: Building a Knowledge Network for Biomedical Research and a New Taxonomy of Disease in November of 2011”を公開した後、精密医療という言葉が、より現実的に使用されるようになりました。このレポートには、「精密医療」が、医療分野の正式な用語として記述されいたのです。この協議会の課題は「分子生物学に基づく人の疾病の新分類」の可能性とニーズの探索でした。

この変化の背景にある理由は以下のようなものです。

「ここで使用されている通り『精密医療』は、各患者の個別の性質によって治療法を構築することを意味します。これは、個別の患者に特化した投薬や医療機器を構築するという、この言葉がもつ意味ではなく、特定の疾病に対しての罹患のしやすさは、生物学的に、あるいは、そうした疾病の予後の状況、または特定の治療に対する反応において個々に異なり、そのサブ分類に分類する手段です。予防または治療ための介入は、それに利する患者に向けることができ、そうでない患者には行わないことで、費用や副作用の面で利点となります。
『個別化医療』という言葉は、この意味にも使用されますが、この言葉は、時として、患者個別に設計されたユニークな治療を意味するという誤った理解をされます。こうした理由から、協議会は、『個別化医療』ではなく『精密医療』という用語が好ましいと考えています。」

非常にシンプルに言えば「精密医療」は、分子レベルにおいて、より正確な患者の診断と治療を可能にする医療の進化を意味します。「精密医療」というこの定義では、究極的な最終ポイントは、疾病の共通する生物学的基盤をもつ患者のサブセットの選択になります。これは、ある特定の外科手術のプロシージャといった、投薬やその他の治療からより利点を得られる患者群です。

アナリスト企業さえも、この変革を取り入れ始めています。個別化医療を有効な記述用語から削除し、その定義をより正確にしようとしています。ガートナーは、プロファイル名を、この分野の好ましい用語として、個別化医療からゲノム医療に変更しました。プロファイルの生物学的な視点を強調したのは明らかですが、ガートナーの定義では、ゲノム医療を「人のゲノムをマッピングすることによる医療科学(およびその他の分野)のブレークスルーモデル」と説明しています。これには、機能ゲノミクス、プロテオミクス、エピゲノノミクス、ニュートリゲノミクス、ファーマコゲノミクスなど、多くの種類があります。

個別化医療という言葉は、今や使用されなくなり、代わって、精密医療が出てきて、あらゆる医療技術ベンダーがWebサイトやマーティング資料で使う新しいバズワードとなりました。

しかし「精密医療」というバズワードの使われ方には、面白い事が起こりました。この定義は、再び、微妙でかつプラスな方向にシフトしています。

2015年1月、精密医療イニシアティブの下、国立衛生研究所は、全ての疾病について精密医療を拡大すべく、100万人以上のボランティアを集めて、全国規模の大きなリサーチ機関を構築するよう命じられました。この研究プログラム (All of Us) は、精密医療イニシアティブの要となる要素で、精密医療は、生活スタイル、環境、生物学的に異なる個人を鑑みた、疾病予防と治療の革新的アプローチであると定義していました。

未だに、個別化医療やゲノム医療の言い換えとして精密医療という言葉を使用していることがあります。しかし、昨今のこのシフトによって、精密医療は、より包括的な分野を意味する言葉として確立されてきました。ゲノム、分子、細胞、ライフスタイル、これまでの医療データなどを繋ぐものとして、精密医療は、ゲノム医療と個別化医療の概念とそれ以上のものを包含するものになっています。精密医療の新しい理解は、純粋な生物学とゲノム学の枠を超え、すべてのデータによって、より正確な診断を行おうとする方向へと向かっています。

これは大変大きなことで、私たちがどのように精密医療を実現してゆくのかを理解する上で、非常に重要なステップです。

[1] "Whole Slide Imaging for Primary Diagnosis: 'Now It Is Happening'." CAP TODAY. N.p., 18 May 2017. Web. 28 June 2017.

 

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