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チリ視察レポート

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はじめに

2月23日~24日にかけて、チリのサンティアゴを訪問し「SIDRA」プロジェクトを視察した。

チリでは、National EHRプロジェクトが進められており、2008年より「SIDRA」(Sistemas de Información de la Red Asistencial:情報システム医療ネットワーク)と呼ばれる国の医療ネットワークの構築が進められた。今回の視察では、SIDRAのユーザや、実際にSIDRAに関わったコンサルタントに、プロジェクトの背景や現状、今後の課題等について話を聞いた。

 

チリの医療制度について

チリは医療保険が普及しており、国民の95%以上が被保険者である。そのうち公的保険は約8割、残りが民間である。チリでは29の医療区に分かれ、区によって医療ITベンダが異なる。医療サービスについては、一次医療は国営の医療機関が提供し、病院は国営と民間の両方によって提供されている。多くの国がそうであるように、チリも高齢化が進み、高い慢性疾患の罹患率に直面し、政府も様々な対策を講じている。

 

SIDRAプロジェクトについて

2008年から始まったSIDRAプロジェクトは、チリ保健省が主導し、それまで紙で管理されていた国営医療機関の全ての医療情報を電子化することが、その目的である。このプロジェクトで、インターシステムズの統合医療情報システムTrakCareが共有のEMRの1つとして採用され、EMRをクラウドで提供している。SIDRAプロジェクトにより医療情報の電子化は急速に進み、現在は、チリの全人口1795万人の約8割をカバーするに至っている。
*SIDRAプロジェクトについて、詳細はこちらの事例も合わせてご覧ください。

SIDRAプロジェクトで電子カルテの普及が進んだことは大きな成果である。さらに、29区の医療区の異なるシステムを協調させたいという要望があり、2016年にSIDRA2プロジェクトが立ち上げられた。
SIDRA2では、医療区ごとに予算を策定し、独立した運営が期待されている。しかし、プロジェクト全体の戦略や予算不足、またセキュリティポリシーの適用が困難、などの理由で現在は、一旦中止となっている。
引き続き、チリ政府としては日本における代理機関と同様に、各医療機関から医療情報データを集め、リポジトリの整備を行うことを模索している。インターシステムズ社としては、この分断され、乱立した異なるシステムを統合するソリューションとして、HealthShareが活用できないか検討している。

このプロジェクトの成果と課題について、ユーザとプロジェクトのコンサルタントから話を聞いた。
チリで最も歴史があり、最大規模の大学病院で、SIDRAのユーザである、チリ大学病院(HOSPITAL CLÍNICO UNIVERSIDAD DE CHILE)医療情報・遠隔医療センターの共同ディレクタであるDaniel Capuro氏、およびHCUCH/CIMT プロジェクト社 のPatricia Gómez氏は、SIDRAによって、電子化が進んだことは評価するが、情報のセキュリティ、患者の同意管理、データの二次利用などの面では課題があると述べていた。

また、SIDRAプロジェクトのコンサルティングを行ったDigital Health Consulting社の Rodrigo Castro Apablaza氏に、課題、展望について聞いた。次の課題としては、National EHRを構築し、相互運用性を実現することで、異なる医療区でも、国民が医療を受けられるようになることであり、将来的には、統合された医療データを集団健康管理に活用したいという要求もあると述べていた。
さらに、チリでは、病院の数が不足し高齢化も進んでいるため、在宅医療システム実現に向けて、国として遠隔医療の取り組みに力を入れているとのことだ。実際、実験的に国民へスマートフォンを配布し、健康状態や食事、活動量などをモニタリングして指導するような取組みも行われている話を聞いた。チリにおける人口あたりの病床数は国際平均の半分程度、日本と比較すると1/6程度である。反面、チリは南米で最も高齢化が進む国でもある。この高齢患者と病床数のギャップに対するアプローチとして、施設整備の議論ではなく、最初から在宅における遠隔医療を前提として、スマートホームの建設が注目されている。

 

チリの視察を終えて

高齢化が進み、慢性疾患の罹患率が上昇傾向にあるという状況は、日本をはじめ先進国が直面している課題である。
チリではSIDRAプロジェクトにより電子化が一気に進んだことは、高く評価すべきである。反面、多くの医療ITベンダが参入したことで、29の医療区では様々なシステムが稼働し、それらが連携されていないため区を超えての運用に問題がある。
次の段階として、National EHRを構築し、異なるシステムを運用する医療区同士の連携を目指しているが、実現に当たっては相互運用性が最も大きな課題である。また、国の政策として遠隔医療にも力を入れていく中で、医療の安全と質の向上を図り、今の支払いモデルを維持するには、ますます医療ITの効率的な活用が必要であると感じた。

 

投稿者:インターシステムズジャパン 営業部 南部茂樹

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