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パート1: 医療組織が、患者エンゲージメントに投資する3つの理由

医療組織が、患者エンゲージメントに投資する3つの理由

パート1:価値に基づくケアへの道を整備

 

先日、パームデザートで開催されたインターシステムズのグローバルサミットでのヘルスケアリーダシップカンファレンスに参加しました。このカンファレンスは、世界中のインターシステムズの顧客が一同に会し、経験、アイデアなどを、(もっともヘルシーな)食事と飲み物とともに、共有する場です。

このカンファレンスで、私は、個別化医療と患者エンゲージメントについてのモデレータを務めました。医療における患者エンゲージメントには、潜在的価値があると考えますが、今日の現実と今後5年から10年で実現したいと希望するものとは、大きな隔たりがあります。5年後10年後には、より予防と健康に力が注がれ、ケアは患者とその家族が中心となっていきます。米国、英国、カナダ、オーストラリア、中国など、さまざまな国の医療で最前線に立っている多様な参加者グループから多くのことを学ぶことに、私は大変ワクワクしていました。患者エンゲージメントは、単なる聞こえのよい流行りのトレンドにすぎないのか、あるいは、予算を組んで取り組まれているのか。もしそうであれば、その理由は?

先ずは、患者エンゲージメントとは何でしょう?

議論の最初のポイントとして、インターシステムズは、患者エンゲージメントの定義について、先ず定義することから始めました。つまり:

以下の点について、患者を関わらせる組織の戦略:

  • 患者自身および責任をもつ家族、その他関係者の医療と健康をアクティブに、かつ豊富な知識をもって管理すること。

これは、以下のことを含みます。

  • ケア記録の確認と管理
  • 状態について学ぶこと
  • 健康的な行動を行うこと
  • 情報提供された医療に対して費用を払うこと
  • パートナーとして医療従事者と相互に関わること

このカンファレンスでは、医療機関と医療情報交換組織(HIE)からの参加者がありました。彼らにとって患者エンゲージメントは、米国連邦政府の 「意味ある使用」要求を満たす最も基本的なことの実現から、患者中心の情報収集、フロー、サービスといったより全体論まで、あらゆることを包含しています。後者は、ウエアラブルセンサーや家庭環境、個別化医療、遠隔医療やモバイルアプリでサポートしている複数のソースやデータからのより包括的な医療記録を含みます。

ベイステートヘルスの患者および集団健康技術担当ディレクター、ケン・ライリー氏の参加で、患者エンゲージメントが推進されました。さらに、「これは明確なスタートと終了ポイントのあるジャーニー(旅)ではなく、現在進行中の進化である」と定義しました。患者エンゲージメントへの投資というビジネスケースの議論では、カンファレンス期間中に上がった、最も引用されたビジネス目標は、価値に基づくケアという新しい世界での成功に関することが繰り返し論じられました。

価値に基づくケアへの道を整備

米国では、Affordable Care Act(ACA:医療費負担適正化法)の無効化、置き換え(する/しない)について、政治的には大きな騒動になっているのにかかわらず、医療費改革について議論がされ、診療ごとの支払いから価値に基づく支払いモデルへ移行しているということについては、基本的な合意がありました。ただ、どのように、いつそこに移行するのかという詳細については、不確かなまま残りました。

米国では、人口の約5%の患者が、医療費全体の1/2を使っていると言われ、医療従事者や医療費支払者(保険会社)を含む多くの業界関係者は、データ分析とAIなどにより集団医療管理に取り組んでいます。目標とするところは、患者の高リスク人口集団に対して、早期に人的に介入することです。行動パターン、遺伝的体質、社会サービスといった、 これまでの医療制度とは異なる要因に、健康状態の大部分が依存しているため、集団レベルのデータや分析によって得られる患者エンゲージメントは、論理的に意味があると考えられます。

図版の提供元: The Advisory Board Company

プライムヘルスケアサービス(AOC: accountable care organization)のエンタープライズITオペレーションおよびインフラストラクチャ担当シニアディレクターであるエリック・ミルハム氏によると、リスクピラミッドの階層に関係なく、来院と来院の間に患者と接触することによって、医療費が削減できると言います。「健康増進のために患者に医師を訪ねさせることが可能になれば、救急搬送が必要な命にかかわる、あるいは急性期のケアから、一歩前進したことになります。長期的にみると、これは有効なのです。」

英国NHSのリンカンシャー・イーストクリニカルコミッショニンググループの責任者であるギャリー・ジェームス氏は、同じような見解を述べ、リーダシップの重要さについても強調しました。ギャリー氏によると、組織の上層部によるコミットメントが重要で、特に、意味のある患者エンゲージメントは、文化の変革に依存しているためです。これまでは、医師は一番知見があり、患者は、その指示に従うことが重要だという考えがあり、医療はどちらかというと階層的でありました。対照的に、上手く行っている患者エンゲージメントは、医師と患者がより平等で協調的なモデルであり、患者の健康の改善と維持のために、医師と患者がともに貢献し責任を持っています。

オクスナーヘルスシステムなどのシステム(医療ネットワークを提供する組織)によって、アップル社との協業により、患者にインタラクティブな時計を提供して、日々のアクティビティでの活動量と血圧を記録する初期の検証デモが紹介されました。血圧が不安定な患者の中には、 3人に2人が、このプログラムに参加して90日以内に、血圧が安定したことが分かりました。カンファレンス参加者の多くが、臨床的な接点以外の方法で患者参加をさせるプログラムに取り組む計画を持っていました。

例えば、ハンタードン・ヘルスケアシステムの CMIO であるウェイン・フェルメス医師は、患者が自分の医療記録に簡単にアクセスし、事務や薬局などのコミュニティのスポンサーと協力して、健康に良い行動を促すようなプログラムを開発しています。そうしたスポンサーは、クラス参加やインフルエンザの予防接種などに割引を提供しています。

ベイステートヘルスのケン・ライリー氏は、患者には、通院しているヘルスシステム以外で、デジタル医療記録を参照したり、共有したいと考える多くの理由があることを認めています。彼はこう述べています。「母は、私たちのベイビーの超音波画像を見るのが大変楽しみでした。記録の共有を医療関係者だけに制限するのは、患者にとってよいことではありません。」

コグノサンテの CTO エリック・ピーターズ氏は、医療情報をどのように使用するのかが、最も一般的なのかを予測することはできないと言います。彼の意見では、API と FHIR 標準をサポートしたアプリケーション開発のクラウドソーシングモデルは、高度に整ったアプリケーションの爆発的な増加につながるだろうと言います。例えば、FHIR に準拠したアプリケーションによって、2型糖尿病のリスクプロファイルを持つ子供の臨床図表的な評価を得ることができる、人口集団レベルのデータを引き出せる可能性があります。これは、医師にも患者にも有用な情報になり得ます。

このシリーズの次の投稿では、医療組織が患者エンゲージメントの投資に使っている、2番目の主たる論理的根拠について述べていきます。

 

著者について

Lygeia Ricciardi (@Lygeia)

デジタルヘルス、患者エンゲージメントの専門家。クリアボイスコンサルティング代表。以前は、アメリカ合衆国保健福祉省ONC(IT調査室)において、コンスーマ・eヘルス局を設立し、それを先導した。

 

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