
価値創造を実践する「世界市民」を育む大学
1971年に創立された学校法人創価大学は、東京都八王子市にキャンパスを置く総合大学だ。2026 年度から経済学部と経営学部が統合され新たに生まれ変わる経済経営学部をはじめ、法学部、文学部、教育学部、理工学部、看護学部、国際教養学部の7学部10学科には、5,000名を超える学生が在籍し、「Discover your potential 自分力の発見」のステートメントを掲げ、一人ひとりの可能性を最大限に引き出す教育を行っている。
「世界72ヵ国・地域 276大学」と交流協定を結ぶなど、同校は国際性豊かなキャンパスが特徴である。文部科学省のスーパーグローバル創成支援(2014~2023年度)に採択された実績を持つなど、その先進的な学校運営を支える学内DXの中核の一つが、InterSystems IRISをベースに開発された 「学習支援ポータルサイト」 だ。学生たちはこのポータルサイトを有効に活用しながら、ラーニング・アウトカムズ(学習成果)の達成を目指す。
システムを内製化して学内の情報を一元化
近年、教育の現場では、ラーニング・アウトカムズを重視した教育改革が進められている。ラーニング・アウトカムズとは、学習目標と期待される成果を明確化するとともに、評価基準を設定して学習の達成度を可視化するもので、日本の教育機関でも2000年代後半から導入が進んでいる。ラーニング・アウトカムズの活用によって、教員は個々の学生の学習達成度を明確に把握できるだけでなく、学生自身も自己の修得度やスキル向上を実感することで、学習に対するモチベーション向上を図ることができる。
創価大学でも、早期からラーニング・アウトカムズの導入を進め、教育の質の向上に取り組んできたが、それと並行して推進してきたのが、学内における情報共有を活性化するためのシステム基盤の構築だ。同校における以前の学内情報サービス環境は、学習管理や教務管理など多くのシステムが乱立し、情報も分散した状態であった。特に授業での ICT 活用においては、教員が使用するシステムごとに課題提出や教材配布の方法が異なっていたため、 学生は履修科目ごとに異なる操作を強いられ、 必要な情報にもアクセスしづらく、大きな課題となっていた。
そこで、学内で必要とされる様々な情報を学生、教員、職員からの求めに応じて機敏に提供するためには、システムの連携とデータの一元化が必要だと考えた同校では、利用者目線で情報サービスを「ルール化」し、「インフラ化」することを目的として、その中核となるシステムを内製化する方針を打ち出した。この取り組みにあたり、開発ツールとして選定したのが InterSystemsのIRIS(当時の製品名称:CACHE)だ。同校では既に CACHE を使って 1997 年に「棚卸しシステム」 2001 年に「入試業務システム」の内製による開発を職員で行ってきた経験があった。特に入試業務システムの開発においては、絶対にミスが許されない状況での高い精度と、毎年のように変化する入試制度に短期間で対応することが求められる。それを長年にわたり維持できた IRIS(CACHE)の開発工程の簡易性を今回のシステム開発でも活かしたいと考え、IRIS による「学習支援ポータルサイト」の構築に着手した。
統合されたサービスで学習環境を全面的にバックアップ
学習支援ポータルサイトは、ヒアリングとコンセプトワークを含めておよそ2年をかけて作成され、2008年4月に本格稼働を開始した。当時のポータル開発メンバーは、学内の職員2名、業務委託会社のサポート要員1名のわずか3名だった。現在はシステム規模も大きくなったことから、学内の職員4名、業務委託会社のサポート要員1名の計5名で運用までのすべての業務を行っている。
学習支援ポータルサイトを通じて提供されているサービスは、各種の連絡機能、授業/学習支援機能、各種情報閲覧機能など広範囲をカバーし、外部のWEBサービスとの連携も図られている。例えば、連絡機能においては、学校からのお知らせ掲示板をはじめ、個人宛の連絡、休講や補講の連絡、講義に関する連絡がメール配信とあわせてポータル上でも確認できるなど、デジタルネイティブ世代の学生にとって、最も有効な情報伝達手段と言えるだろう。
本システムの主軸となる学習支援機能においては、 開講される全ての授業ですぐに利用できる環境が整っており、授業教材の利用から課題の提出、収録映像の視聴など、授業における学生の学びをサポートしている。また、学生が今取り組むべき課題やその提出状況をリアルタイムでチェックできるなど、学習に計画的に取り組むための情報提供機能も備えている。
また、学習を進めるにあたり、シラバスの情報を効果的に活用できるのも本システムの大きな特徴となっている。シラバスとは、授業の目標、内容、および成績評価方法を明確にするため、教員が作成する授業計画書のことで、学生としては、単位を取得するために一年を通して参照すべき必須の情報となる。教員は、このシラバスの作成を日本語と英語にわけてポータル上で簡単かつ柔軟に行え、学生もこの情報をもとに、履修計画やポートフォリオの入力、授業アンケートの回答など、様々なシーンで活用できるようになっている。オンライン授業機能では、教員が授業ごとにZOOM の URL を登録することで履修学生に周知され、アクセスした学生の出席情報は出席管理システムに自動的に反映される。履修変更した際も学生には出席すべき授業が適切に表示される。 この機能は、2020年から数年にわたり学生の生活を一変させたコロナ禍において、1カ月という短い期間で構築され、他大学に先駆けてオンラインでの授業を開始する上で重要な要因となった。
その他、出席確認や時間割の確認、履修登録・成績照会システムなど、日常的に利用頻度の高い外部システムは、ポータル上からSSO(シングルサインオン)でスムーズに連携できるよう統合が図られている。

ユーザーが必要としている情報を積極的に発信
学習支援ポータルサイトを軌道に乗せた創価大学では、入学予定者を対象に、合格発表後から4月の入学までをサポートするポータルシステムとして「入学支援システム」 も稼働させた。
入学支援システムは、各種入学手続きの申請だけでなく、入学前教育や入学前ガイダンスの提供、さらには各種の連絡機能も搭載し、入学に際しての不安解消や入念な準備を進めてもらうための様々な機能を備えている。
そもそもこの入学支援システムは、2011年3月11日に発生した東日本大震災の際、4月に入学予定の学生達への連絡が困難になったことがきっかけとなって検討されてきたものだ。2019年にオープンした本システムは、結果的にコロナ禍においてオンライン授業環境へとスムーズに移行するための基盤として最大限に活用されることとなった。
さらに2020年の秋には 「保護者ポータル」 をオープンした。これは学生の保護者向けに学内の情報を提供するポータルサイトで、学生の履修・成績情報、リアルタイムな出席状況をはじめ、大学の就職活動支援に関する情報提供の他、保護者と直接連絡が取れる機能も備えている。かつては保護者からの問い合わせに個別に対応していたが、現在は本ポータルからプッシュ型で積極的に情報を発信することで、問い合わせ数も大きく減り、保護者の満足度も向上したという。
こうして内製化によって整備された各種システムは、すべてInterSystems IRISをベースに開発された。開発に携わったメンバーの一人である、総合学習支援オフィス システム支援課 副課長 樋口伸彦氏は、IRISの特徴について次のように話している。
「IRIS を利用する最大の利点は、開発におけるその優れたパフォーマンスです。
PythonやSQLなどの他の言語とも高い互換性があるため、短期間で高度な開発を実現できます。また、本学では学生の履修管理や成績管理を行う教学システム、出席管理システム、図書館システム、人事システムなど、様々な外部システムを活用していますが、ODBC接続をはじめ、多様な方法でスムーズなシステム連携が行えるという点は、IRISを使ってみて再認識したメリットでした。もちろん、DBの性能の高さは言うに及びません。圧倒的な処理速度は、IRIS の最大の魅力と言って良いと思います」
積極的なヒアリングで利用率を向上
一方で、システム運用において創価大学が重視しているのは、①利用率向上、②変化への迅速な対応、③運用コスト抑制、④柔軟なシステム連携、という4つの要件だという。特に、利用率が向上し、より多くのユーザーに活用されることは、システムの存在価値にも関わる重要な指標になると考えている。
同校のシステム開発を統括している総合学習支援オフィス 部長 石橋博道氏は、利用率を高めるための施策について次のように話す。
「より多くのユーザーにポータルを利用してもらうためには、現場のニーズに的確に応えられる、高度にカスタマイズされたシステムが必要だと考えています。その上で、欲しいと思っている情報が即座に検索できること、そして何よりも使い易いシステムであることが絶対条件です。そのために開発メンバーも様々な努力を続けていますが、それ以上に重要となっているのが、学生をはじめ教員や職員の皆さんへのヒアリング活動です」

同校が重視しているのは、各種システムの運用において、ユーザーである学生や教職員から丁寧にヒアリングを重ね、日々の機能改善に積極的に取り組むことだ。特に、学生により構成されている「ポータル改善委員会」からの意見は貴重だ。例えば、授業の現場からのリクエストによって、クリッカーシステムが作成された。これは、授業中に学生のスマートフォンからリアルタイムに取ったアンケートの結果を瞬時に集計するシステムで、双方向型で授業を進める上で役立っている。
また、 ポータルサイトのデザイン変更機能やGoogleマップを利用した施設・教室検索機能をはじめ、 外国語の能力向上のため、留学生と直接交流することができるワールドランゲージセンターの予約システムも、学生からの要望を反映して実現したシステムだ。このように、ユーザーの要望をスピーディに実現することができるのも、IRISを使って内製化する体制を整えたことによる成果だ。

AIをはじめとした新技術でさらなる進化を目指す
同校では今後、学習支援サービスの中にAIを積極的に組み込んでいくことも計画している。例えば、200人を超える学生一人ひとりに対し、教員が個別にフィードバックを行うのは多大な労力を要する。そこで、生成AIにコメントの原案を提案させる方法も一つの解決策と考えている。
学生に対するフォローアップの現状について、石橋氏は次のように述べている。
「当校では現在、学習支援ポータルサイトに記録された学習ログに基づき、欠席が増えてきた授業数や、期限までに提出されなかった課題数など、成績不振要素の変化をいち早く発見し“学びのつまずき“の兆候として顕在化することで、学生に対して個別面談を早期に実施するといった対応が可能となっています。今後はAI技術などの積極的な導入により、学生にさらに充実したフォローアップを提供できるようになるのではないかと期待しています」
さらに石橋氏は、InterSystemsのサポートについて次のように評価している。
「当校のシステムの品質維持に貢献しているのがInterSystemsのサポート体制です。優秀なメンバーが最新技術を駆使した手厚いサポートを実施してくれることによりInterSystems IRISの機能がフルに引き出されているのだと感じています。今後も、当校のシステム開発と運用に欠かせないビジネスパートナーとして、長いお付き合いをお願いしたいと思っています」
お客様ご紹介
学校法人 創価大学
所在地 :東京都八王子市丹木町1-236
設立:1971年4月2日
ウェブサイト
https://www.soka.ac.jp/


































