エグゼクティブサマリ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界を混乱に陥れるよりずっと以前から、サプライチェーン業界はデジタルトランスフォーメーション(DX)に注力をしてきました。サプライヤーから物流会社や小売業者、製造業者にまで及ぶ広範なサプライチェーンは、オムニチャネルの接続性というビジョンを追求し、革新的な顧客体験の実現、オペレーションの効率化、コスト削減、柔軟性や回復能力の向上を目指しています。その目的は、取引先・パートナー企業を相互につなげること、プロセスを簡素化して効率を高めること、そして以下のような基本的な疑問に対し、事業責任者が素早く正確に答えられるようにすることです。
- 十分な在庫があるか?
- 人員の配置は適切か?
- このプロモーションはなぜ成功したのか?
- できる限り効率的に運用しているか?
- 新製品の投入を成功させるには?
- 顧客サービスの水準を高めて、高い収益率を維持できるか?
- アジリティ(迅速性)と強靭性を強化するには?
常に進化する環境に適応し、変革し、繁栄する重要性を認識する業界リーダーたちは、最後の質問が非常に重要だと考えています。残念ながら、適応は予想より緩やかで、予期せぬパンデミックなどの外的要因によって、システムやプロセスのつながりの弱さが露呈しました。しかし技術の進歩に伴い、企業は迅速性や強靭性の利点を痛感するようになり、データ戦略を再考しつつあります。新たな戦略として浮上しているのが、データの正確性と完全性、それを活用するプロセスの自動化と最適化、および高度な予測分析や処方的分析を強化して意思決定を導き、プロセスをさらに自動化して改善する戦略です。これらの3つの柱によって、小売業者や製造業者の今後の軌道が根本的に変わることになり、パンデミックを最小限のダメージで生き残り、将来の不確実性に向けて最も優位に立てるのは誰かが決まります。
正確な最新データへのアクセスこそ企業の生命線
ほとんどの組織はデータを信頼しておらず、必要な情報を抽出する技術がないことが分かっています。企業は在庫水準や売上、生産量の可視化など基本的なものを必要としています。個々のソースやアイテムを可視化することで複雑さが増す一方、チャンスも増加します。企業はデータ取得デバイス(IoTを含む)を通じて、注文や出荷、位置情報などに関する有益な詳細情報が得られるリアルタイムデータにアクセスできますが、残念ながら、これらは人(および多くの既存のシステム)が管理できる以上のデータを生み出しており、企業がこうした資産を最大限に活用するのは難しくなっています。
可視性の欠如は、企業の迅速性の欠如とも相関関係にあります。実際、最近のIDCのレポートによると、サプライチェーンで最も深刻なギャップは「必要な変更を迅速に把握して効果的に対応するためのサプライチェーンの可視性と強靭性の欠如」にあるといいます。多くの企業で多種多様なシステムやデータベースが稼働しており、さらに悪いことに長い年月の間にM&Aが行われる中で、システムの合理化や統合が最小限にとどまっていることを考慮すると、この問題はさらに複雑になります。そこで「コントロールタワー(管制塔)」という概念が現れました。プラットフォームやデータベース全体を可視化して、企業全体および取引先パートナーのデータやシステムを包括的に正確かつリアルタイムで把握できるようにするものです。ビジネスを包括的かつ正確に把握できなければ、成長への計画を立てるのは難しく、パンデミックのようなサプライチェーンの混乱に対応するのはほぼ不可能です。
リアルタイムで包括的で正確かつ信頼できるデータにアクセスできるからこそ、一層データの信頼性が必要になります。データを取得するだけでは十分ではありません。効果を上げるには、データを取り込んで分析し、それに基づいて行動できるようにする必要があります。事業責任者は、データの出所や、データが利用可能になるまでに何台のシステムや変動を経てきたかを知る必要はありません。ただ注文の品が時間通りに届けられるかどうか、適切な店舗に適切な品揃えが用意されているかどうか、またはプロモーションを行うのに十分な在庫があるかどうかのみ把握しておけばよいのです。リアルタイムの履歴データに基づく分析は、在庫切れを減らし販売実績を説明するのに役立ちます。プロモーションの成果が出ない理由は、店舗によって特設棚に設置する展示品や商品がないだけであったり、包装が破損しているだけという場合があります。ユーザーが必要な答えを得られる場合、データは企業にとって戦略的差別化要因になります。
「自動化の島」からエンドツーエンドで接続されたプロセスへの移行
オペレーションが非効率であれば、多くの小売業者、メーカー、物流業者、サプライヤーに悪影響を及ぼします。問題の原因は大抵、設計上も技術的にもサイロ化され断絶されたプロセスにあります。これらのプロセスでは、外部のワークフローが企業に大きな影響を及ぼすことを想定していません。
「自動化の島」から効率化されたエンドツーエンドのサプライチェーンプロセスへ移行するのは大変な作業ですが、管理可能な方法で対処できます。改革対象の1つが、販売・業務計画(S&OP)プロセスです。これはほとんどのサプライチェーン組織で中核をなす傾向にあり、販売、生産、調達などの部門を横断してステークホルダーやデータを集約しています。そのため改革はS&OPから始めると良いでしょう。小さな努力がビジネスに大きな違いを生むこともあり、複数の部門にまたがるデータを組み込むことで、すぐに恩恵が得られるからです。
残念ながら多くのプロセスや補助的技術は、サイロ内で機能するよう設計されています。関連システムが個別にデータを生成し、個別にレポートを作成するため、決定が個別に下されるのも当然です。個別の対応では複数領域を横断する対応ができず、部門を越えて問題が起こると厄介です。
こうした欠点に対処するため、企業は断絶されたプロセスやアプリケーションを統合する新技術を検討する必要があります。各組織はデータ管理技術の進歩や新たなAPIを中心とした開発アプローチを活用して、既存のシステムを中断させずに境界を横断するプロセスの接続や自動化に取り組んでいます。こうした組織はサービスやマイクロサービスを公開して接続しオーケストレーションすることで、既存のレガシーシステムを置き換えることなく利用し続けることができます。新規のサプライヤを追加し、新たな成長機会を取り込み、パンデミックなど予想外の事象に対応するため、業務に応じて継続的に変更が加えられています。結果として広範囲にわたる包括的な視点が得られ、部門間で摩擦のないやり取りが可能になるほか、柔軟性や効率性が向上し、洞察が深まります。
「直感」ではなくデータや分析に基づいたビジネス
信頼できるタイムリーなデータを統合されたビジネスプロセスに組み込むことに加えて、業界リーダーは意思決定に役立つ分析および機械学習(ML)技術に注目しています。これは自動化されたプロセスに分析を組み込むことでビジネスを処方的に推進することを意味する場合もあれば、戦略的計画に役立つ診断や予測に基づく洞察を得ることを意味する場合もあります。いずれの場合も企業は直感だけでなくデータにの活用でスマートになるほか、起こったことを報告するだけの状態から、起こりそうなことを予測し、分析に基づいてインテリジェントなデータ駆動型の行動を主体的に行う形へと進化します。
サプライチェーンの責任者は、単に反応するのではなく、先を見越して状況を管理したいと考えています。昨今のパンデミックは既存のサプライチェーンプロセスの限界を露呈し、多くの企業は適切に対応することが実質的に不可能になりました。実店舗を持つ小売業者は特に大きな影響を受け、数年前からのオンラインショッピングへの移行の影響がさらに増大しました。Eコマースの能力を加速させる準備ができていた小売業者もいれば、移行の速さに不意を突かれた小売業者もいました。
しかし何が要因であれ、主要なビジネス指標が可視化されていなければ、不完全で不正確なデータに基づいて意思決定が行われ、最適とは言えない決定や行動が繰り返されることになります。責任者はパフォーマンスを監視し、実際の結果を素早く確認し、重要な指標やKPI(主要業績指標)をリアルタイムで追跡して、効果的に対応することが必要です。
需要管理はサプライチェーンの一分野で、企業は人工知能(AI)やMLに重点的に取り組み、需要をより正確に予測してモデル化しています。一部の組織は総需要を重視していますが、先端を行く企業は、地域から店舗群へ、さらに個々の店舗や個別の在庫管理(SKU)へと、計画をより具体的なレベルに細分化するようになっています。さらに詳細で正確な予測プロセスにより、全体のパフォーマンスや収益性を大いに改善できます。
MLなどの高度な分析技術を利用することで、企業は予測可能かつ繰り返し起こる状況を自動化して、ユーザーの負担を低減できます。こうしてプロセスにスマートな意思決定が組み込まれ、人が介入しなくてもシステムで例外事項に対応できれば、ユーザーはより緊急性の高い問題の処理に専念できます。例えばクレジットカード詐欺などの問題もあれば、ロジスティクス業者の複雑な配送経路設定に関わる問題の場合もあります。
開始する
デジタルトランスフォーメーション(DX)は広範に拡張されたサプライチェーンを変革し、消費者、小売業者、メーカー、物流業者、ブランドオーナーに価値をもたらします。企業は既存の技術インフラを捨てる必要はなく、既存のシステムやデータをつなげることで、それまで投資した技術を維持して活用できます。膨大な量の情報をリアルタイムで管理して、組織がより良い決定を下せるよう役立てることは、人間やスプレッドシートにはできないことです。既存のサプライチェーンインフラを補完する技術によって、ギャップを埋め、盲点をなくし、企業に必要な情報を提供します。
迅速性と柔軟性はこれまで以上に重要性が増しており、部門間でデータやサイロをつなげる包括的なアーキテクチャによって、サプライチェーンの責任者が望む可視性、インテリジェンス、自動化が実現します。より良いデータによってより良い知見がもたらされ、それがビジネスを前進させ、多くの企業において収益の増加、利益率の管理、強靭性の強化、高い顧客満足度の維持を実現します。
多くの専門家は、意味のある、ビジネス価値をもたらす取り組みから少しずつ始めることを推奨しています。例えばビジネスの中で何が盲点になっているかを自問しましょう。あるいは統合や自動化によって改善できる具体的なビジネスプロセスを明らかにして、そこから始めます。IDCのプログラムバイスプレジデントであるサイモン・エリス氏が指摘するように「可視性の向上、より良い意思決定、データと統合プロセスや高度な機能をつなぐデジタルプラットフォームによって、真に強靭性おを実現できる」のです。
InterSystems IRIS データプラットフォーム
InterSystems IRISは、世界中の顧客に利用されている次世代のデータ管理ソフトウェアであり、既存のデータやアプリケーションインフラを拡張してより良い意思決定をもたらし、インテリジェントで効率化されたエンドツーエンドのプロセスを生み出すとともに、多岐にわたるミッションクリティカルなサプライチェーンの取り組みについて、正確なリアルタイムの可視性を提供します。
例えば以下のような顧客に利用されています。
- 欧州の大手食料品店は、分析および機械学習機能を利用して、ビジネスの成果を高める新たな機会を見出しています。この企業は業績が同水準の店舗群の開発に取り組み、需要パターンをマッピングして不採算店舗で売上が低迷している要因を把握した上で、店舗全体で一貫した業績を上げるために適切な変更を加えています。
- 世界最大級の輸送会社は、オペレーションを最適化する大規模なデジタルトランスフォーメーション(DX)プロジェクトに着手しました。分散化された組織は、数十年の間に多くのレガシーソリューションを開発していましたが、これらをマイクロサービスやAPIを通じて統合する予定です。 ネットワーク内では常に10億件を超えるコンテナ処理を行っていますが、統合された正確なリアルタイムデータを利用することで、すべての出荷コンテナの位置や状態も数秒で追跡できるようになりました。機械学習を利用して大量の統合データを分析して業務オペレーションを改善しており、例えば需要予測期間を2週間から12週間に延ばした他、需要に基づく価格設定戦略を実施しました。
- 48カ所で子会社140社を運営する3PL業者は、コントロールタワー(管制塔)となるアプリケーションを実装してデータの統合とプロセスの効率化を行い、250を超える個別のアプリケーションを集約しました。ロールベースのダッシュボードでリアルタイムの可視性を実現し盲点をなくす一方で、透明性と迅速性を実現しまました。この組織はさらに、プロセスフローを統合して効率化することで、新規取引先の追加にかかる期間を6カ月から2日に短縮し、迅速性と顧客サービスを改善し、増収できました。
- 大手消費財サプライヤーは、データと機械学習を利用して在庫水準を最適化しながら、顧客サービスを改善しています。同社はプロジェクトを開始するにあたって、まず在庫水準の最適化に取り組みました。注文履歴や需要など複数の業務システムから取得したデータを利用し、社内で開発した機械学習アルゴリズムを採用することで、在庫データや生産データの精緻化や更新を行い、在庫を大幅に削減したほか、OTIF(時間通りの完全な配送)を維持しながらコストを削減し、顧客サービススコアを改善できました。
インターシステムズについて
1978年に設立されたインターシステムズは、医療、金融、サプライチェーンなどの業界における非常に重要なデータを扱うためのデータテクノロジーを提供するリーディングプロバイダです。インターシステムズのクラウドファーストデータプラットフォームは、世界中の大規模組織の拡張性、相互運用性、スピードの問題を解決します。そのサポートは高く評価されており、80カ国以上の顧客やパートナーに24時間365日、卓越したサービスを提供しています。
インターシステムズは、マサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置く株式非公開企業です。世界25カ国に拠点を構えています。