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EMRのビジネスケースとガバナンスの構築

ブルース・ウィンザー、情報サービス担当エグゼクティブディレクター兼ベンディゴヘルス CIO

ローマは一日にして成らずと言いますが、これは電子診療記録(EMR)システムにも当てはまります。EMRシステムの普及は、プロジェクトというよりは長い旅のようなものです。しかし、オーストラリア、ビクトリア州のベンディゴヘルスでは、このプロセスの最も難しい部分はEMRの導入ではありません。ビジネスケースの構築、ベネフィットの特定、KPI(主要業績指標)の定義、EMRに関連するガバナンスの確立のほうが難しいのです。

今年の初め、私たちは新しいベンディゴ病院に移転しました。ベンディゴ病院はビクトリア州で最大の地域病院としての開発事例であり、入院患者、日帰り患者、精神衛生の患者用に3,500の病室と約500のベッドが用意されています。新しいEMRと臨床情報システムの導入は1年前に開始され、2017年末の実稼働を予定しています。

一方、EMRのビジネスケースの構築は5年前に開始されており、ビジネスケースに関連するベネフィット実現プログラムは今後10年以上モニタリングされることになっています。

このプロセスに関与する人は誰でも、EMRのビジネスケースが最終的な確定までたどり着くのは非常に難しいことを知ることになるでしょう。私たちの場合は、理事会の承認に6か月を要し、ソフトベネフィットとハードベネフィットの比較を何度も繰り返しました。ベネフィットの提供も簡単なことではありません。そこで、私たちが得た教訓のいくつかを共有したいと考えました。

  1. 最初の日からベネフィットを実現する

    私たちは最初の日からEMRのベネフィット実現プログラムに取りかかりました。現地および各国のさまざまな情報源に対してビジネスケースを教えてくださるように依頼しましたが、多くはあまり協力的でありませんでした。そこで私たちは、サードパーティのコンサルティンググループを活用してフレームワーク開発を支援してもらうことにしました。また、専門のベネフィット実現マネージャーの役割が必要であることを理解しました。この役割は、適切なガバナンス構造の確立と基礎データの収集を担います。基礎データがない場合、どうやって測定を行えばいいのでしょうか?

  2. EMR チームとICT チームを分離する

    私たちは早期からEMRプロジェクトチームとICT(情報通信技術)部門を分離しました。これら2つの部門は継続的に対話を行い、まとまっていますが、最終的には個別に運営されています。臨床に重点を置き、臨床プロセスの再設計に従事する新しいプロジェクトチームを作ることがベストプラクティスとして推奨されます。

  3. KPI の調査と検証を行う

    将来的なKPIのモデルを構築できるようにするため、ビジネスユニットのマネージャーに基礎データ収集の役割を担ってもらいました。私たちはベネフィットのフレームワークを開発することから作業を開始しました。そのフレームワークでは、約70個のKPIの内部モデルが作成されました。そこからベンディゴヘルスにとって関連性の高い25個を選び出し、さらに達成可能であると考えられる19個にまで絞り込みました。そして、次のような問いを立てました。これら19個は合理的であるか?それらのコストはどれほどになるか?それらを本当に達成できるか?その後、さらに詳細なモデル化とKPIの妥当性の調査をサードパーティに依頼しました。

  4. ベネフィット実現までに十分な時間を取る

    私たちのベネフィット実現モデルは10年という期間にわたって計画されています。これは、そのモデルがビジネスケースを補完し、そのベネフィットが短期、中期、長期というタイムスパンで達成されるようにするためです。私たちは、最初の数年はKPIの達成率が低くなることを理解しています。その後は、予想されるコスト削減を100%達成できると期待しています。ただし、ベネフィット実現はEMRの導入手法(段階的導入、一括導入のいずれか)、経験、ベンダーとの関係によっても左右されます。私たちは、ここまで達成してきたことに非常に満足しています。

  5. ベネフィット実現のためには独自のガバナンスが必要となる

    私たちは、ベネフィット実現のための正式なガバナンスフレームワークを用意しています。これには多くの労力が投入され、理事会も多大な支援を行ってくれました。すべての役員はベネフィット提供の責任を負い、ビジネスユニットのマネージャーはデータの収集と報告の責任を負います。私たちはこれがベンディゴヘルスにとって非常に大きな投資であることを理解しているため、報告は1か月に1回とし、KPIのレビューに重点を置くようにしています。具体的なコスト削減の実現が見込まれる箇所では、それらのコスト削減額は適切な時期に自動的に部門の運営予算から差し引かれます。

  6. 徹底的に説明責任を果たす

    ベネフィットは戦略上/運用上の計画および行動に対応付けられます。役員もまた、彼らが承認した部門のベネフィットを記述した正式な合意を通じて説明責任を負います。私たちは戦略的な計画ツールを使用して目標やタスクを記録し、毎月役員に報告を行います。

  7. お金のためだけにこれを行っているのではないことを忘れない

    私たちはKPIを、品質と安全、サービス向上、直接的な財務という3つのカテゴリーに分類しました。役員は直接的な財務に注目しますが、最初の数年はコスト削減のベネフィットを実現するのは難しいこと、およびEMRは臨床成果と患者サービスの向上を主眼に置いていること(特に品質と安全の領域において)について合意が得られました。これは当然のことなのですが、それを皆に浸透させるのは難しいものです。

頑張りましょう!

 

 

ブルース・ウィンザー

ベンディゴヘルスで情報サービス担当エグゼクティブディレクター兼CIO(最高情報責任者)を務めており、ICT、アプリケーション、医療記録を担当。また、新しいベンディゴ病院のICTとEMRのプロジェクトのエグゼクティブスポンサーも務めている。1976年からICT業界に身を置き、民間部門、公共部門の両方でいくつかの主要なICTの仕事に従事。医療機関や地方政府で新しいモデルやサービスを提供する際の詳細事項の規定と管理において主導的な役割を果たし、州や連邦政府が資金提供しているさまざまな大規模プロジェクトでプロジェクト管理を行ってきた。

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